2013.01.21
人を幸せにする力
大塚秀夫

同志社大学大学院ビジネス研究科教授浜矩子先生は「経済成長の時代はすでに終わっている。今までの価値観を棄てて新しい発想をしなければ日本に未来はない」と言われます。「日本経済はもう若くはない。高度経済成長期で青春を十二分に謳歌し今や立派な大人になった。今はもう次の段階、つまり成熟経済の時代に入ったのである。時代の新しい流れとして注目しているのが里山資本主義である。これは都市部から農山村に移住し、そこにある資源を活用して生活や経済活動を行うライフスタイルである。耕作放棄地を耕して、野菜を作ったり、地元で採れた有機野菜を使ったレストランを経営したり、里山に自分の生きる場所を見つけ、地元の人たちと交流しながら生き生きと暮らしている。こうした若者たちの共通点は農業が儲からないことを承知して、金銭よりも暮らしやすい環境や日々の充実感、誇りを持って仕事ができることに人生の価値を見出していることだ」という。佐藤さんご夫妻はまさにこの生き方を実践されてきた。まあ、決して若くはないが、拠点を埼玉から新潟豊実に移してきた。最初は友と語り合う桃源郷「悠悠亭」を建設したのがコスモ夢舞台の始まりであった。

それから17年の歳月がながれ、里山には人が集まるようになった。

無農薬のコメを作り、レストラン和彩館を運営して、佐藤さんやマキ子さんに触れて、笑顔とおいしい食事の提供にいやされ、夢を語る佐藤さんに対して、若い学生が興味を持った。

彫刻家佐藤賢太郎さんは「人間性豊かに、創造力、企画力をつける人間になろう。」という言葉を吐く人は多い。しかし、本当にこれを身につけるには、真剣勝負の体験がないといけないという。17年間をかけて作り上げてきた。

新潟大学の学生が佐藤さんの講演会を開こう、ということになった。若者が実行委員になるよう振り向けた。若者はこの話に乗り気であった。しかし周囲から、そんなことをして責任とれるのかと心配してくださったそうです。

人は状況が厳しくなればなるほど、古い価値観や自分の経験則に則ろうとする。それが佐藤さんの言う「往々にして順調に歩んできた人間は、いつしか無難な生き方を選択する癖がついてしまう場合が多いように思う。」ということだろう。佐藤さんは教師として就職できたのに、それを投げ出して彫刻の道を選んだ。自己責任で真剣勝負を自らに課したのです。言われるように無難な道をあえて捨てて、彫刻家の道を選んだ。もはや、佐藤さんの前に道はない。道を自らが選ぶ立場に立つ生き方を選択したのだ。

佐藤さんは、「厳しい師匠の元で、二度と戻れない人生の選択だった。しかしこの時が人間力を養う時期であったと思う。」という。

新しいステージが私の目前に迫ってきている。人生二度なし。

佐藤さんを見ていると、「念々死を覚悟して初めて真の生となる」が生涯を通して求めてきたことを感じて、私は佐藤さんをモデルに学んでいきたいと思う。