2011.12.31
難は変革創造の時
佐藤賢太郎

「あっぷるはうす」のオーナーから依頼された個展はあまりにも急で開催はかなり厳しかった。

その1.「あっぷるはうす」の個展は元旦から始まり月末まで一ヶ月間であった。そのあとすぐに横浜高島屋の個展が決まっていたから新作は作れない。

その2.今までのような無理の出来る体調ではなかったので。

その3.冬に開催となると、雪国の豊実から作品の搬入が厳しかった。

その4.決めたら案内状をすぐ作らなければならない。

その5.新潟にいて大宮の会場にはいつも詰めていられないこと。

以上のようなことが頭に浮かんだ。オーナーにこのような現状ではできる範囲は限られるが、それでよかったら受けること答えますと、「ありがとうございます」との返答でした。

オーナーは私に、個展開催の話をもちかけたいがきっかけがなかなかできなかったこと、個展開催予定者の突然のキャンセルに困りに困って、せっぱつまって電話をかけたことなどを話された。私は天から与えられた個展と思い、無理を承知で受けることにしました。

 さて新作制作が難しい中で何とかしなければならないのです。ある作品を組み合わせによって新しい作品にすることを思いつきました。里山アート展で出した作品を個展に出すことです。そんな作品を見て頂きたい。そんな作品が何点かあります。

 昨年の京王百貨店二人展では初めて油絵を飾ったが、今回も意外な作品を出すことになった。ある方から石に「水魂」という文字を彫ってほしいと頼まれていたのがヒントになりました。以前個展で私の言葉を展示したことがあったが、今回は自分の直筆で書こう、そして個展会場に「命」ということを詩にして書を飾ろうということになりました。ところが田舎では紙がない、額がないので困っていた。

書は木の板でもダメ、紙でも様にならなく困っていたところ、里山アート展参加作家との付き合いから石板を手に入れることとなった。この石板に文字を彫ってみてはどうかと思いついた。

書体を調べるのに、修行時代からの3冊の字源辞典や隷書体文字が手元にあった。「水魂」文字依頼の方に選んでいただいたところ、金文形のほうを選ばれたので個展でもそうしようと決めた。散文や、「絆、命、楽」を楽しく彫った。

極めつけは私の造語「難は変革創造の時」、つまり難は自己変革、創造のチャンスである、といった意味である。これを作品とした。

病気をいただくことは自己変革の絶好のチャンス、そして新しい作品を生むのは困ったときにある。そのように思ったからです。

個展開催がなかったらこんな作品は絶対に作らなかったと思います。作家にとって新しいものを生み出すことはとても難しいものです。難があればこそ、新しい芽が出ることもあろうと心より思うのです。

 ついでに申しますと、「水魂」という文字を彫る石も大変難しい材質でありました。だからこそ、考えもしない造形ができそうです。「水魂」にご期待下さい。