2020.04.30
ありがたいことである。
御沓一敏

 コスモ夢舞台の豊実では、ますます空き家が増え、そこを借り増しているという。
そこで、佐藤さんよりお声がかかってきた。襖に筆で「方丈記」の一文を書いて欲しいとのことである。
 一昨年は枕草子の「春はあけぼの……」の部分を書かせていただいた。昨年、書く予定が、筆者の入院や、今年は新型コロナ・ウイルスといろいろなことが続いて、実現が難しい状況であった。

 佐藤さんからは、あなたの字で、今、書くことが大切。手が震える。それも良し。曲がっている、昔のような力強さがない。諸々、全てOK、今のあなたが全力で書いてくれればそれが最高なのだと言う。
 書家でもない。義務教育の書道の時間でしか書いた経験のない人間に何故ここまで言ってくれるのか、不思議ではあるが、ありがたいことである。

 すぐに、大きな半紙が送られてきた。それに文字を書いてくれれば、襖に貼り付けてくれるという。とてもプロでは考えられない発想である。
 挑戦してみて気づいたことは、想像以上に自分の体力が落ちている事、中腰が無理、膝が使えない。唯一、大き目のテーブルで、立ったまま書けば何とかなることに気が付いた。
若き頃、佐藤さんと学んだ中の一つ、「万象受容」の実践編である。
 何とか書き上げた後、発送の荷づくりは娘がやってくれた。閉塞感の漂う中、貴重な時間を過ごさせてもらった。