2019.06.18
大自然を舞台に
森紘一 

 JR磐越西線の豊実駅に近い阿賀野川をまたぐ船渡大橋の川辺は、雨上がりの山と田んぼの緑に包まれて、静寂な空気が流れている。6月15日(土)の昼下がり、ここでオープニングセレモニーがはじまるという。

  東京ブロックからは大野さん、大塚さん、時崎さん、御沓さんとわたし、新潟ブロックからは博進堂の清水さん、郡山の大島さん、長谷川さんと小宮さんが参集した。

 どんなシナリオが用意されているのか、進行役の大塚さんも充分呑み込んでいるわけではなかったようだ。ともかく、「第1回奥阿賀国際アートフェスタ」のオープニングセレモニー開始が大塚さんから発せられて、舞台は幕を開けた。

ライフジャケットを着けた佐藤さんのパフォーマンスは、ボートに乗って岸辺に辿り着き、大木に括りつけられた脚立の桟橋を上って会場に現れるところからはじまった。広場には、ピアノの鍵盤や廃材などを工夫した作品が田んぼに向かって並んでいて、何故かそこに、子ヤギも野草を食みながら参加していた。“コロンちゃん”と名付けられた子ヤギの「めえー」という鳴き声はあたりの風景にも溶け込んで響き、いっそう長閑だった。

佐藤さんの演出は、担当者がキーボードをたたくとプロ作家(長田良夫さん)の色鮮やかな絵画作品の幕が外され、さらに別の一人が叩くドラの音に合わせて、佐藤さんが楽しそうに作品群にペイントを始めるという流れだった。これに倣って、はじめはためらいがちだった参加者の子連れと若いアメリカ人の二人も、次第にワークショップに夢中になって作品を彩っていった。

実は今回のイベントは、5月20日〜6月30日と開催期間が長い。そこで、イベント会場を森林と川辺に分けている。5月30日(木)には、廃材のドアーや消火器、ガスコンロなどを組み合わせた作品20点の置かれた森林会場で、プレオープニングイベントとしてスウェーデンなど外国の参加者も着色作業などを楽しんでいた。

 こうして大自然をアトリエに、パフォーマンス・アートの醍醐味を味わっていただいたわけである。 

 この後、会場を和彩館前の展示館会議室に移して、シンポジウムが開かれた。子どもをふくむ14名の皆さんが出席された。

 今回のイベントに参加した感想は、皆さん「楽しかった」だが、それぞれに実感がこもっていた。

「一つひとつの作品づくりだけでなく、皆さんが参加してこうしたイベントを開催できること自体がアートですね」という意見や、「久しぶりに、ゆっくりと寛ぐことができました」という感想もありました。 
  最後に、日本人と外国人の違いに触れて佐藤さんは、「生活習慣や文化の違いはあるが、皆で渡れば怖くない式の慎重な人が日本人には多い。アートを楽しむことで、自分の人生をより豊かに生きるメンタリティーを養ってもらえればありがたい」といったニュアンスでコメントされていた。

この先、「奥阿賀国際アートフェスタ」が回を重ねることで、「里山アート展」との相乗効果も上がって来るに違いない。ともあれ我われも、元気に参加し続けたいものである。