2009.12.
2010.03.06
ギリシャへの思い
森 紘一

『ギリシャからの手紙』(佐藤賢太郎奥会津書房刊)を読んだのは、4年前になる。以来、アテネから西へ車で3時間半というアマリアーダのクルータの町は、いつかは行きたい憬れの地となった。紺碧のイオニア海を臨む埠頭に立つ白い人魚像は、文庫本の表紙のままに、わたしの脳裏に焼きついて離れない。

佐藤さんが石彫制作に出向いた経緯や、制作過程の奮戦ぶりも興味をひいたが、アマリアーダ副市長リオシス氏との交流は、類を見ない国際親善物語として楽しめた。    

また、作品を「ゴルゴーナ(融合)」と名付けた由来とその背景には、作家 佐藤賢太郎とコスモ夢舞台の生き方や思い入れのすべてが凝縮されているように思えた。

先頃の日本橋島屋個展を取材した美術評論家 藤島俊会先生は、「近年の佐藤は次々と未知への挑戦をクリアし、新しい出会いを実現させて、着実にステップを踏んでいる」、さらに「石彫の制作は肉体労働に等しい。佐藤の身体は縄文の血を受け継いでいるように自身の本領を発揮している」と新潟日報紙で評している。

そういえば「ゴルゴーナ」は、縄文の日本からギリシャに泳ぎ着いた人魚像をイメージしたと佐藤さんも著作のなかで述べている。神話の国ギリシャの文化が世界中に与えた影響は計り知れないが、古代日本との共通点も多いように思える。「ゴルゴーナ」は、まさに佐藤さんとリオシス氏の共同制作であり、文化の融合でもあるといえそうである。

3月26日に出発する「佐藤賢太郎と行くギリシャツアー」は、佐藤さん夫妻を含む総勢13名である。仄聞する経済情勢や治安も気がかりだが、「ゴルゴーナ」との対面とリオシス氏夫妻との面会は、我われ旅行団にとって何よりの楽しみである。

バンクーバーの冬季五輪も無事終わった。その記念すべきオリンピックイヤーに発祥の地を訪れることになったことは、たんなる偶然ではなく、「コスモ夢舞台2010」にとっても飛躍の年になりそうな気配である。