2009.12.

2016.11.06
オートファジーな暮らし
森 紘一 

 今年のノーベル医学生理学賞に輝いた大隈良典(おおすみよしのり)先生は、記者会見の質問攻めに「(昨日からほとんど何も食べておらず)私は今オートファジー状態です」と、ユーモアーたっぷりに笑顔で答えていた。受賞理由とされるオートファジーの発見とは、はたして何なのか? どんなメカニズムなのだろう?      (朝日新聞デジタル版から)

新聞の一口メモによると、「オートファジーとは、細胞が自身の成分であるタンパク質などを分解して、そこから栄養素を得る非常手段だという。言い換えると、細胞内の不要なタンパク質を分解して原料のアミノ酸を調達し、それを利用して新たに必要なタンパク質を合成するリサイクルシステムである」という。

加えて、オートファジーは細胞内の浄化作用やその他さまざまな機能をも担うことが明らかになりつつあり、医療などに役立つことが期待されるという。

我われの身体の生命維持の不思議な装置に、わたしなどは只々驚いてしまう。

と同時に、妙な符合にわたしは感じ入ってしまう。毎年豊実で開催される里山アート展の基本テーマは「循環・再生・創造」である。あるものを生かし、あらゆるものの繋がりを生かして、新しいものを創り出す。これもリサイクルシステムの応用である。 

最近の地方創生や田舎暮らしの進めではないが、阿賀町豊実の我われのホームグラウンドで行われるイベントには、地元はもとより関東首都圏や海外からの見学者もふえている。「里山アート展」には地元の小学校や郡山の障害者施設の出品参加が続いている。ありがたいことである。過疎といわれる豊実の集落に、新しい風が徐々に吹き始めていることを我々も実感している。 

大きな自然に囲まれた豊実の日常は、ある意味では都会的な快適さとは異質な世界かもしれない。だからこそ「豊かさとは何か?」を熟考した人びとにとって、阿賀町豊実は魅力あるスポットとなりつつあるのではないだろうか。

さらに、オートファジーな暮らしと文化の芽を持つ豊実には、これからの社会のあり方や人の生き方についての新しい期待が静かに寄せられはじめているのかもしれない。