2009.12.

2015.03.21
春のたより
森 紘一 

 昨日(3/20)、奥会津書房から一通の封書が届いた。それは、『会津学』7号発刊のお知らせでした。
2011年3月に発生した東日本大震災と原発事故を契機に、奥会津書房は救援物資の確保と輸送を最優先とし、以来、出版活動を停止していた。被災時に編集中であった年刊『会津学』7号は未刊のままであった。

それだけに活動再開は、我々にとっても嬉しいたよりである。『会津学』7号の発刊に寄せて、編集長の遠藤由美子さんは感謝をこめて次のように述べている。 

“各地の仲間たちは、被災された方々への思いのすべてを奥会津書房に託してくれた。しかし、そうした作業が一段落しても、状況は何も変わらなかった。気が付けば文字も言葉も蜃気楼のように実態を失い、出版することの意味さえ見えなくなっていた。

 有事の只中だからこそ、記録し継承しなくてはなるまいというのが、出版を志してきた者本来の使命であったと思う。しかし、もとより非力な編集部では、バラバラに砕けた心を前にして、失った言葉を、壊れた記憶を、拾い集めることすらためらわれた。できなかった。

 ただ、それまで記録させていただいた奥会津の方々の深い経験知や様々な文化の基層に、震災後を生きるなにがしかの手がかりがあると信じることはできた。そこにすがりながら、今、会津に生きているからこそ私たちに与えられたはずの役割を探してきた。その役割は、出版のみならず、別の形で担うことになるだろう。子どもたちの未来の肥やしになれることなら、懸命に行じようと思う。“  

 日本で一番山奥にある出版社といわれる奥会津書房だが、西会津から山道を上手く抜ければ豊実から約1時間半の至近距離にある。遠藤さんには、コスモ夢舞台が主催するフォーラムやシンポジウムに何度もご足労をいただいている。そもそも佐藤さんが「パトラス2006」の招聘作家として、単身ギリシャへ渡ることになったのは、遠藤さんの推挙によるお蔭であり、EU・ジャパンフェスト日本委員会の皆さんとのご縁にも広がっている。昨年の佐藤さんのギリシャ再訪問とその顛末記「ギリシャ・夢の架け橋」(歴史春秋社刊)でも編集を担当していただき、再び大変お世話になっている。 

 奥会津書房と遠藤由美子さんのこれからに、我々も心から感謝をこめてエールを送りたいと思います。