2009.12.

2021.7.4
講演「創造に生きる」から8年
森紘一

 東急東横線の大倉山駅から徒歩7分、かなりの急勾配を上ると左手に大倉山記念館がある。ギリシャ風の巨大な建物は、大倉精神文化研究所本館として昭和7年(1932)に建てられ、現在は横浜市の公共文化施設となっている。
 階段を上がった正面のホールは80人程度の収容が可能で、左右の丸い柱が美しい木組に支えられて天井につながる重厚なつくりとなっている。こちらは和風の寺院建築が取り入れられている。

 佐藤賢太郎さんが「創造に生きる」〜ギリシャとの絆・人、自然との共生〜
と題して講演を行ったのはこの会場で、8年前の2月のことである。
 講演の中身は、コスモ夢舞台の活動、ギリシャへの夢、ガンとの闘いの3部構成で、会場の皆さんのあたたかい拍手に包まれて終始おだやかな空気が流れていたと記憶している。
 会場からは、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)がこよなく愛した日本とギリシャの共通点を訊ねる声もあった。「手紙を出しても、3年たっても返事が来ない。ギリシャ人のこころは、よく分かりません」。佐藤さんの率直な答えに会場は爆笑だった。

 小泉八雲自身は1890年代の神戸新聞に「地震と国民性」について執筆し、日本人の自然災害からの回復力と忍耐力、自然に対抗するというよりは共生するという生活態度を高く評価し、未来の日本人が無計画な森林伐採などせず、シンプルライフを維持して自然への畏怖の念を持ち続けることが大切だと説いています。東日本大震災を体験した日本のこれからの方向性は、はからずも八雲が120年前に予言した「共生」や「シンプルライフ」のモードへと進み始めています。さらに、「日本人の魂は、自然と人生を楽しく愛するという点で、誰の目にも明らかなほど古代ギリシャ人の精神に似通っている」と語っています。

 佐藤さんは今や、ストーンサークルづくりに忙しい。第3回奥阿賀国際アートフェスタの当初の会期(〜6/27)を7/25日まで約1カ月延長し、広大な会場の整備や旧冬季児童寄宿舎を借り受けた佐藤賢太郎美術館の改装整備に没頭されている。開催日初日(5/30)オープニングセレモニーとして一部公開された会場や美術館の評価も高く、地元はもとより各地からの期待も高まっている。 
 新潟日報紙(6/5日付)も「アート驚く縄文の営み 阿賀・豊実で国際フェスタ」と今までにない報道ぶりである。
 佐藤さんのストーンサークルづくりから縄文村構想は、いよいよ第2ステージへと加速されているようです。

 わたしの夢も膨らみます。そしていつの日か、あのギリシャつながりの大倉山記念館で「創造に生きる。そして、縄文村建設へ」を佐藤さんに語ってもらいたいのです。