2018.04.30
「一ヶ月の滞在を終えて」
日本人ウーファー・N

 一ヶ月の豊実滞在は、あっという間の時間でした。しかし、一日一日を振り返ると、本当に様々なことを経験させていただいたなと思います。

 毎日が新しいことの連続でした。「昨日の続きのような今日」という日がなく、その日一日を生き抜くような日々でした。二週間かかった配管修理でさえ、毎日、問題の箇所や天候等の条件、足場となる山の斜面の状態も異なっていました。自然の中に生きる、自然を利用するとはこういうことかと実感します。 

 賢太郎先生と奥様の持つ人間関係は非常に広く、この一ヶ月でたくさんの方にお会いさせていただきました。

 「お風呂やストーブの燃料に使ってほしい」との連絡で、剪定した枝の受け取りに伺ったり、展覧会の搬出に同行させていただいたり、福島の観光に連れていっていただいたり。その度に色々な暮らしや生き方を見ることが出来ましたし、観光といってもただの観光ではなく、お二人の様々なエピソードを聞きながら、所縁のある場所を案内していただきました。

 また、賢太郎先生を訪ねて来られる方、和彩館へのお客様、ご近所の方ともお話をさせていただき、初対面の方とこんなに頻繁にお会いすることはこれまでありませんでした。

 私が見たのはその方々の人生のほんの一部ですが、シンプルな言葉になりますが「いろんな人が居て、いろんな人生があるのだな」と感じさせてもらいました。現在20代半ばで、つい数年前まで親元や学校で守られて過ごし、やっと社会に出始めたような私にとって、そうした人生経験の数々を伺えたのは貴重なことでした。 

 そして、毎日朝から晩までご一緒させていただく中で、先生と奥様からは本当にたくさんのことを教わりました。

 道具の使い方や農業等の枠に留まらず、普段の生活で忘れがちな「工夫して生きる」こと、あるものを利用した循環再生、自分たちで育てた作物や採れたての山の恵みを頂くことの豊かさなど、「私たちは自然の中に生きているのだ」ということを思い出させていただきました。

 毎日美味しいお料理を食べられたのも、大変しあわせなことでした。先生曰く「あなたは食事のときに一番いい顔をする」そうですが、無理もありません。「どんどん食べて」とのお言葉に甘え、毎日お腹いっぱい頂きました。奥様のお料理は、これからもたくさんの方に食べてもらいたいです。

 賢太郎先生は毎日絶えず動き続けていらっしゃいます。今日はこれをやる、あれをやる、これがあるからこう使おう……と、休まることがありません。その姿はとても輝いていて、創造の楽しさや喜びが伝わります。 

 様々な困難を乗り越えて「今が仕合わせ」と笑うお二人と生活出来たことは、本当に貴重な経験でした。一ヶ月で見ることが出来たのはほんの一部分かもしれませんが、とても濃密な日々でした。故郷がひとつ増えたような気持ちです。また必ず参ります。