2010.02.04
佐藤賢太郎石彫展を見学して
その1 「佐藤さんの作品にふれて」 
大塚 秀夫

佐藤賢太郎さんは埼玉蓮田のアトリエを拠点に活躍されていた。その後、拠点を新潟豊実に移しコスモ夢舞台を主宰されている。コスモ夢舞台は里山アート展、田んぼ夢舞台祭り、景観・ビオトープ作り、体験見学・教育、国際交流を柱に展開している。アートと自然を介した「都市と田舎の交流」をめざしている。

とにかくエネルギシュだ。疲れを知らない。ずーと働き続ける永久機関のようだ。家内は佐藤さんのパワーに圧倒される。そのパワーはどこから来るのだろう。

佐藤さんは新潟阿賀町に生まれた。雪で家が押しつぶされそうになる。そんな雪をエネルギーに変えられないだろうかとの想いで工業大学に進学された。学生時代はラグビーに熱中した。卒業を控え、ラグビーのように熱中できるものを探していた時、秩父で路傍の石仏に触れた。それ以来石を彫り続けている。

今回の作品のほとんどをその郷里豊実で制作されたという。1点1点がほのぼのと心があたたかくなる。愛犬「りき」が昼寝をしている作品がある。なにか、そのまわりが陽だまりで暖かいひざしが感じられる。喜多方で農業を営まれるBさんは「耕された土は温かく、ふかふかして気持ちがいい。」という。「佐藤さんの作品にもそれがすべてその土のようなものを感じられる」と述べられていたことが印象に残った。

東北は青森の版画家棟方志功。板を彫る。佐藤さんは石に命を吹き込む。どちらも東北出身だ。東北には縄文土器が数多く出土したという。1万年前あのような火炎土器・土偶の造形はまさに芸術だ。今回の個展に人物像には土偶を彷彿させる作品があった。遮蔽土器をイメージした作品。相変わらず佐藤さんの裸婦像はどれもいい。たんに裸ではなく女神のようだ。棟方が裸婦をスケッチする。デッサンする。どれも豊満な女性像だ。棟方はいう。こうした裸婦でも額に点を描けば観音菩薩だという。佐藤さんの裸婦ははじめから女神として生まれてきたようで初々しい。

作品と出会った瞬間がたまらなくうれしくなる。うれしくなると欲しくなる。
   佐藤さんの作品はいつもうれしくなる。目がいきいきとしている。表情がゆたか。佐藤さんのようだ。今という瞬間を見逃さず、石のなかの塊からいのちを取り出している。
   そんな作品との出会いが私をわくわくさせる。