2010.02.17 
共時性について
大塚秀夫

共時性とは意味ある偶然の一致である。これを唱えたのはユングである。共時性は人類の意識を大きく成長させるために働いているという。

コスモ夢舞台を主宰する佐藤賢太郎さんとの出会いはユングのいう意味ある偶然の一致だろう。佐藤さんとは大学の先輩・後輩である。先輩にラグビーを一緒にやろうと今の職場に誘われた。職場の仲間たちで彫刻家になった佐藤さんを励まそうと飲み会からはじまった。

コスモ夢舞台を支える仲間たち。この仲間がいなければコスモ夢舞台のいまはなかっただろう。佐藤さんの意識の中につぎからつぎに上ってくるものを一つひとつ形にしてきた。

個人では多分、意識的な関心のわずかなエネルギーしか使えないだろう。仲間が共感して、そのエネルギーが集合して、その原動力となってここまで来た。われわれの仲間の関心と合流して、新しい状況が生まれて、新たな可能性を引き出してくれる。個人の力ではなしえなかったことをコスモ夢舞台では見事にやってのけ、可能にした。

新潟豊実故郷で作品をつくりながら東京日本橋高島屋で石彫展が開催できることは我々仲間としてもうれしい限りである。

このたびも音楽とギャラリートークの司会を引き受けた私は個展の会場に佐藤さんの作品『這い上がれ』を持参した。この作品に出合ったのは2回目のときの石彫展だった。はじめて、この作品を見たとき、もう私は惹きつけられていた。これを手に入れなかったら悔いが残る。画商さんも「これは結構人気があります。」という。私はこの作品にであったのも共時性であると思う。もし、佐藤さんが丸のこで指を切り落とさなければ、この作品は生まれなかったにちがいない。この作品はこの世に存在しなかっただろう。

佐藤さんの作品『這い上がれ』に惹きつけられるようにこのたび石彫展の会場に音楽とギャラリートークにお越し下さったKさんに出会うことができた。詩人で著書も出版されている彼女は「この作品はすばらしい」と絶賛された。人間の無意識の奧底には人類共通の素地が存在するらしい。この共通するイメージを想起させる力動を「元型」と名付けたのもユングだ。そして、作品に惹きつけられるのはそこに自分と重ね合わせるからだ。

「作品は自分を買ってくる」と河井寛次郞はいう。
   作品『這い上がれ』には佐藤さんの生き方が詰まっている。まさに逆境の中にあっても、這い上がっていく大きな力を与えられているのだ。