2013.08.21
お地蔵入魂式
佐藤賢太郎 

遠い昔の知人がある日ひょっこり電話を下さり、いわき市の龍雲寺に私を紹介して下さいました。龍雲寺では「お地蔵さん建立プロジェクト」を立ち上げられ、その地蔵を私が制作させていただくことになったのです。  

私たち夫婦は平成25年8月21日、地蔵祭り、入魂式にご招待を受けました。この日は、お地蔵さんまつりに設定されていました。梅花講(御詠歌の会)の皆様や、檀家の方や子供たちが集いました。 

式次第は、鮫島大仙住職さんの入魂、般若心経(みんなで唱える)、御詠歌、回向、焼香、そして私の挨拶、護寺会会長さんの挨拶、住職さんのお礼の言葉となっていました。 鈴を鳴らし、あの世とこの世をつなぐ歌、ご詠歌も素晴らしいものです。 

龍雲寺さんのご接待、心づくしには恐縮いたしました。そして、全て自然体で執り行われました。入魂式、地蔵さま祭りでは、学童たちが開会の挨拶、手を合わせるその姿にとても嬉しくなりました。子供たちに英語を早く覚えさせるより、このように手を合わせ、感謝する心を育てることがいかに大切なのかを感じました。 近頃、電車に乗れば一斉に携帯電話に向き合う無機質な大人たち。子供たちは、パソコンゲームなどに夢中になっている時代。そのような世相において、子供と大人が一緒に地蔵様に手を合わせる光景は、その後の人間教育にどれだけ良い影響を及ぼすかと思いました。 

その意味において、お寺の果たす役割の大きさを感じました。また、護寺会会長さんの地蔵を想う素晴らしい挨拶もありました。その後、素晴らしい書院室内に置いて会津漆塗り食器でいただく精進料理はとてもおいしかったです。この料理を作られたのは檀家の奥さんたちでした。また、会長さんともこの席で、人と人のこのような触れ合いがいかに大切か、そして、これを成り立たせるような仕組みが必要であると話し合いました。

 私はいままで全国各地に彫刻を作らせていただきましたが、これほど多くの人々と心を繋ぎ、愛されるのはまれで、作家冥利に尽きます。作家としても経済的に成り立ち、作品を通して心がつながれることに喜びを感じます。 

お土産のなかに漆塗りの地蔵さんのスプーンがありました。そして、仏壇に添えるステンドグラスの灯が一対あり、早速我が家の仏壇に捧げました。90歳になった母は「亡くなった父ちゃんが喜んでいるよ」と言いました。 

見えない糸で繋がれた出会いに感謝します。そして龍雲寺の住職、鮫島大仙さん、奥さんの気配りと心尽くしに感謝申し上げます。