2012.12.30
導かれる作品
佐藤賢太郎

 いつも申していますが、新しい作品を生み出すことは難しい。創造は導かれて、と思うこの頃です。

 長野からお墓の依頼を頼まれて、伊達冠石を使うことになった。そこで、産出地の宮城県国見の山に石を買いに行きました。しかしその後、自分サイドで作りたいとのことになり、原石を渡すことに終わった。とても残念であった。

しかし私は転んでもただでは起きないことを信念にしています。それは何事も意味があって、私に与えられたものと受け止めることにしているからです。仕事になりませんでしたが、この石との出会いによって、私は新しい作品を作る機会をつかみました。その石を使って来年、平成25年の日本橋高島屋の個展に出品することにしました。

 伊達冠石という玉石は外側が鉄分で褐色に色がついています。かつてレリーフで人の顔を作ったことがありましたが、立体でこれを生かして作品にしたいと思っていました。

素材が新しくなっても、何を作りたいかが決まらなければ石集めのようなものです。ここが一番肝心なことです。私はガンになって、2年前から命ということを意識しました。それを今度は、ガン克服のために真剣に勉強したなかで学んだことを作品にできないかと思いました。早速この暮れにその作品題名を1.原因と結果 2.来たバスに乗れ 3.人は希望によって生きる に決めました

どんな作品ができるか皆様も楽しみにしてください。私にとっては2年間取り組んできたことでもあり、こんなに身近で真剣なテーマは他にありません。生活と一体となる彫刻を創造する楽しみがここにあります。