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      2003.2.9

佐藤賢太郎との対談

  「仲間たちとそのベクトル1」(大野賢二)  蓮田アトリエ囲炉裏にて

 大野さんとは作家になる前からいろいろお世話になっている23年来の付き合いです。

あるものを生かして魅力的な建物を作るスペシャリスト棟梁大野さんと2月9日竹取

作業の後、二人で話した対談から。

 物を作る職人としての大野さんの存在は大方が認めるところでありますが、この機会

に其のほかの面も知っていただけたらと思います。

ふくろう会について

大野 こんな幅のある仲間集団は日本全国でもなかなかない。だいたい同じ人間の集

まりになる。誇りで、自慢できることだよ。自信を持つべきだと思う。

佐藤 本当にそうだ、私はこんな仲間がいることをいつも誇りに思っていますし、財産だと

思っている。なかなかできるものではない。

大野 仕事上では決して付き合うことのないいろんな人と対等な立場で話しができる。

理想としては解っていてもできないもんだよ。誰が偉いとかそういうところがないところがいい。

佐藤 私は一所懸命さ真摯さそんなところに人間としての価値を置きたい。私が夢舞

台の目指すところの一つはそのような感動ある人間交流ということです。

大野 それから仲間に入って付き合っていく中でたとえばMさんは変わってきたと思う。そ

れは私のようなタイプでなくではなく、いろんな人と出会っているからだと思う。

佐藤 ふくろう会の目指すところについてまだ言っていませんが、ふくろう会のいろんな方

から学び、より善く影響を与えられ、人間としての深まりや成長につながることを願って

います。物を作り楽しんだというところで止めていては物足りない。海外旅行に行ってき

たということだけではつまらない。そこをとおしてどう人間的な幅がひろがり深みを増し

感性がまったかが問題だと思う。

大野 ところで佐藤さんがいつまでも蓮田にいるのなら、今までのように全て佐藤さんが

皆を引っ張り、発信、指示するということでいいと思うが、田舎に帰らなくてはならない現

実が迫っている。そうなったら誰がその役目をするの。今からそういうことをスタートしていか

なくてはならないのじゃないの。心配だ。

佐藤 そのことは幹事の方と話したのですが、私に代われる人はいないということです。

どこにいようとふくろう会の発信は佐藤賢太郎が行うことでふくろう会が存在するとの幹

事の考えです。それに、今は基礎を作っているときだと思っている。基礎は私が作らねば

ならない。

大野 佐藤さんが言いづらいことも佐藤さんが言ってきて、ここまできたと思う。そういうこ

とは佐藤さんがいなくとも補えることが大切だ。

佐藤 大野さんの言わんとすることは私が言いづらいことを私が言わなくともそれをいえる

人の存在が必要ということですか?それなら解ります。

建物創り

佐藤 よくここまでやってきましたね、大野さんがいて、みんながいてできました。お金が

なくてもこんなことはできそうですが、正直言って誰にもできるものではないね。ものすごい

条件が揃っていたからできたのだと思う。後もう一歩です。大野さんが動けるうちでないと

できなくなってしまうね。

大野 冗談でなく後2年くらいで動けなくなりそうだよ。皆はまだ作るの、もうやめて欲し

い、疲れたと内心思っているのではないか。一番は、素人集団で怪我がなかったことこ

れはすごいことだよ。いくら良いことをしても怪我をしてしまったら、おしまいだ。それがすごく

心配の種でした。

佐藤 本当にそうだよね。だから建設作業をとおして学ぶところがある。道具を大切に

扱って欲しい、職人にとって道具はとても大切にしているものなのだ、その辺を解ってほし

いのでしょう。私も気がつかないところがあって悪いね。

大野 あんまり言うとおかしくなってしまう、冗談じゃない、なんで俺が怒られなければなら

ないのと腹を立ててしまう人も出るよ。難しいところだよ。

佐藤 それを大野さんが受け入れてくれたからここまで来れた。でも皆も精一杯やって

いる、反対に大野さんを素直にすごいなと認めている。偉いと思います。そうしながらお互

い自己成長を図りたい。大野さんは大切な人です、しかし大野さんだけでなく、私を信

頼してくれる人は皆、なにができるできないでなくとっても大切な人です。

大野 俺がいくらこうしたらよいと言っても佐藤さんが受け入れなかったらだめっだった。

結局最後は佐藤さんの決断だよね。

佐藤 大野さんにこうすればと言われながら迷うこともある。そんなに作ってその後始末は

だれがするの、重いなと思っての日々もあった。でもせっかくやるのだからより善くやりたいと

背伸びする。追いたてられ動かされているのは私みたいだ。でも大野さんがそう言ってくれ

るからここまできました。やれるところまでやろう。人生、今できずにいつやれる。

大野 人間の命は解らない、人事でないと感じるよ。

 

竹取作業

大野 材料をもらう、これは本当に見えない苦労があるよ。

佐藤 今回の竹取にしても私は三度も事前にお願いをし、お礼や仕事の後始末、相

手に対する気遣いがいるよね。

大野 ただで材料を集めるというがただではない、いろんな努力が要るんだよ、やってみな

いと解らない。

佐藤 大野さんには材料集めの苦労をしていただいています。だからといってこんなに

苦労して集めているなんて言っては夢がなくなってしまう。黙々とするからいつか価値が認

められる。解っている人は解っています。

大野 竹切りをしていて地主のおじいさんが枯れ竹を切ろうとしているが、なかなか切れ

ない。自分たちの必要な竹だけとって知らん顔していたらきっと印象を悪くして、紹介し

てくださった方の顔をつぶすことになる。だから頼まれたわけでもないがきれいに枯れ竹も

整理しておかないとならないものだよ。

佐藤 大野さんだから出来た気遣いです。相手の機微を感じる能力ですね。