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       2002.12.26

佐藤賢太郎との対談

「夢を描く下地」(御沓一敏)    居酒屋・魚民にて

 御沓さんとの付き合いは13年でしょうか。ふくろう会員としては浅いのですが、

以前から自己研鑚の場でともに学んだ仲です。コンピュータソフトの仕事をして

いますが、私が話したことを即座に理解され、見事にレイアウトし表現してくだ

さいます。また、私の内面にあるものを引き出してくれる力がある方です。だから、

私もどんどん自分の夢を話したくなります。

 

夢舞台は共同制作

佐藤 夢舞台をつくることを宇宙からとまではいかなくても、遠くから見たらどん

な風なのかとふと思った。豊実のような何もない、夢も持てないようなそんな場所

をまさしく、白いキャンバスのように例えてみれば、わかりやすいなと思ってね。

豊実というキャンバスに、みんなで共同制作の作品をつくっていくみたいな感じ

で、今は、点描画でテンテンと点を打っているという段階なんだが、いろんな人が

いろんな色で点描画に加わっていくっていうか、そんな感じだなという風に思うね。

御沓 夢はどんどん膨らむけれど、全てを1枚のキャンバスに描こうととすると難

しいね。ここが豊実の夢舞台とすると、だいたいハードとしても7割方できてきた。

それにソフトを加えた絵を先ずは、1枚描くのかなぁ。全国版というキャンバスも

できてくるかもしれないが……。さらにプラネタリウムという視点も入れながら、その

中でのふくろう会員一人ひとりの点描というか、輝き(存在)というのは、想像

することもあるだろうし、農業もあるし、原稿を書くことなどいろんなものがある

よね。

 

グランドデザインがあること

佐藤 まだ、その段階なんだよね。大野さんともよく言うことは、建物を作るの

が大変だと思っているが、このプロセスがなかったら2回も豊実に行ったら、後

は、もう行かないだろう。温泉、遊びだけでは飽きてしまう、ということです。建物

ができたら、次に、何をするのかということも考えなくはならない。建設と同時に

考えて行くこと、すなわちグランドデザインがないとそこで終わってしまう。

例えば、農業のシンポジウムをするということも、コンサートをするということもそ

うだしね。 新年の抱負といういうことで、私も書きましたけれど、向上心を常に

持つこと、好奇心を持つこと、向学心を持つということだし、そういうことがないと

いつの間にか色あせてしまうんじゃないか。

そこで何を目指していくのかというところを常に考えていかなければならないと思

う。

御沓 Kというとマイナスイメージしかないけれど、皆が意識してそこを目指し

ていくためには、向上心・好奇心・向学心の頭文字をとって3Kとするとか、簡

略化してわかりやすく、覚えやすくするということも必要だよね。

私があるところで聞いてきた言葉、カキスケ(感謝・喜働・素直・謙虚の頭

文字)ということが大切なんだと言ったら、20年経った今も、それを忘れずに実

践している同僚がいるけど、「目指すものが何なのか」肩肘張らなくても、日常

生活をしながら意識を持つというためにはこんな工夫も大事かなと思う。

佐藤 向上心というのは、自分の言葉で言えば、今、自分がやっていること

に価値を見い出せなかったら駄目だなと思う。ふくろう会の人間関係について

もこんなに価値があるんだと自分で発見しない限り、駄目だと思う。青い鳥

は足元にある。お墨付きをもらったから価値があるのではなく、反骨精神とい

うか、今は、世間で認められなくても、先ずは、自分たちで価値をつくればいい。

既成のレールに乗って安定を求めるだけじゃつまらない。

 いつも言うけれど、自分の人生でふくろう会のような人間関係はなかなかで

きないなと思っている。だから、すごく大事にしていきたい。先ずそこが足元で

すよ。それから私の言う向上心というのは、最後は、高いところを見ていくって

いうか、人間としての向上ということです。自分たちだけが楽しんでいればいい

んじゃなくって、社会に善い影響を与えるほどの存在を目指すということです。

それには自分の精神性の高さが求められることになる。

 

夢に生きる作家の姿に共感して

佐藤 先日、御沓さんからいただいた「今日もうれしい事がありました」というメ

ールのことですが……。

自然な生き方を大切にする著名な女流建築家に「夢舞台のグランドデ

ザイン」や「ふくろうだより」、私の「作品集」をお見せしたところ大変関心を示

され、石の彫刻家との組み合わせは経験ないので是非、今度、お願いしてみ

たい。そして御沓さんにはいつも「ホットな情報をありがとうございます」とおっしゃ

られたとのこと。私もうれしいです。

 ところで、御沓さんは何の目的でそのような方とお会いするんですか、

御沓 佐藤さんを紹介するとき、教職という安定した地位を捨てて彫刻の道

に入り、芸大出でもなく高名な先生との師弟関係もなく、縁と縁をつなぎ人

間関係を大切にして、夢を描きながら、ここまでのぼって来た反骨の人という

説明をします。

 本来なら、作家として彫刻だけやっていればいいのに、夢を掲げ本物を追求

していく姿は、時として、強引とも我がままともとられます。

自己研鑚の場でもそうでしたが、私は一貫してそれは誤解だと言い続けて

きましたし、私はむしろその部分に共感してきました。また、人間関係を大切

にするそのいき方に共通する部分があるんです。

本モノと思える方に出会ったらその方との縁を大切にする。

切っ掛けは、仕事の関係だとしても、それだけにとどまらず、趣味や考え方、生

き方を含めた人間そのもので接していきます。その関係を飛石のように置いてお

く。最初は一見関係ないように見えていたものがあるとき、ぱっと繋がっているん

です。

話してみたら本モノの方には本モノ(夢舞台の話)が通じるということがわか

ったんです。

佐藤 その本物と向き合う。誰が何と言おうと情報発信することの大切さを

感じた、と言っていましたがなぜなのか。それが自分の日常生活や夢舞台どう

繋がっているのかその辺を聞かせてください。

御沓 戦後の50年余り、金とモノだけを求めて突き進んで来た日本、その

結果の今の閉塞感をみるとき、心ある人は今までの延長線はもうないなと

思っています。これからの生き方は、健康で、自然とともに生きる、感動のある

人間交流があって三度のお飯がいただければ十分ではないかという夢舞台の

考え方に共感をしてくれます。

焦る必要はないけれど、人生という限られた時間の中で考えたとき、同時

に出来ることは、早く進めた方がいいと思ったんです。

佐藤さんに何故かと訊かれて考えてみたんですが、今までの、金銭物欲主

義の生き方(出世・金儲け・効率等)は左脳だけしか使っていません。私はソ

フトウェアという形に見えないモノのセールスを仕事としていますが、今回のように

直接仕事とは関係ない話だけをして帰って来ることもあります。それでも何とか

注文をいただいているのは、人間としての関係が曲がりなりにもできているからだ

と思うんです。

言ってみれば、私のセールスは右脳を使ったセールスなんですかね。生活も

右脳生活だから、ふくろう会の夢舞台の話が身近に感じられるのかもしれませ

ん。

佐藤 感動ある生き方というのは本物と向き合うことですね。それにはもっと、

今の日本人は右脳を使う生活を大切にしないとね。作家として生きる問い

かけがそこにあるのではないかと思います。