2009.06.11
体験学習とコスモ夢舞台
森紘一

 6月8日の夕方、マキ子さんの車で東京都立T校の中学2年生4人が「和彩館」へやってきた。桃源の湯に入った後、夕食の席で自己紹介があった。H君、O君、Y君、K君、それぞれに快活な少年たちだった。班長のH君と仲間たちのチームワークもよかった。

食事のあと、石夢工房の広場で篝火を焚いて楽しんだ。星のない曇天だったが、杉の葉と枯れ枝だけのファイアーストームはひとしきり天空を焦がした。都会では、個人の家庭で煙を出すことはご法度のご時世である。豪快で自由な火遊びが少年たちを虜にしたのも無理からぬところかもしれない。お父さん役の賢太郎さんとお母さん役のマキ子さんは黙って見守っていた。

翌6月9日早朝、田んぼの中につくった水芭蕉の池に裸足で入り雑草取りをした。昨日体験してきたという田植えも、4人そろって少しだけ追体験した。老犬のリキと若いチロも大はしゃぎで少年たちを追って畦道を走り回っていた。

佐藤家では、食前唱和が習わしとなっている。覚えの早い少年たちは、ためらうこともツカエルこともなく「天地一切の恵みと これをつくられた人々のご苦労を感謝して いただきます」と声に出していた。挨拶と感謝の気持ちを声に出すことは、日常的なマナーである。少年たちは、初めて口にする山菜などもためらわずに食べ、美味しいと笑顔を見せていた。

午前中は、薪割り、風呂焚き、焚き木の運搬と忙しかった。チェンソーが使えるようになった。栗や柳の木の薪割りにも挑戦した。大きなボイラーの風呂焚きのコツも呑みこんだようだ。それぞれに得意なことも苦手なことも違うようだが、全員が共通の体験をしたことで仲間意識も高まったようだ。学校の先生方を乗せたマイクロバスが巡回視察にみえるというハプニングもあった。

昼時は、「和彩館」名物の十割そばをお代わりするほど食欲があった。午後の作業は栗林の整備だった。100坪近い林の小枝拾い、枯れ木の火つけと焚き木の運搬は少々ハードだったかもしれない。早めに汗を流した後は、最後の晩餐の準備の手伝いで、またひと仕事だった。阿賀野川沿いの滔々亭でのバーベキューは、集落に住むピカピカの1年生も加わって大家族の賑わいだった。

生徒たちは、アート展会場の作品「Cosmic Heart」にも寄せ書きを取り付けてきたが、就寝前、マキ子さんに乞われて、今回の体験学習の感想を色紙に書きこんでいた。

「ここで経験したことは、きっと一生の思い出になります」。「僕たちに続く後輩たちにも、ぜひここの素晴らしさを伝えたい」。名残惜しそうな雰囲気が十分伝わってくる文章とそれぞれの表情だった。

これからのコスモ夢舞台にとって、広い意味での教育は大きなテーマである。コスモ夢舞台塾の構想にとっても、体験学習の積み重ねは生かされるはずである。一人ひとりの体験や考えをもとに、我われも全員でカリキュラムづくりを始めていきたいものである。