2010.06.03
ある高校生の体験学習
佐藤賢太郎

高校1年生男子を迎えにいってきた家内は、家に戻るや否や私に開口一番、「気合を入れてきた」と言うのです。一人の生徒がふざけた感じで「マキコさーん」などと馴れ馴れしい態度をとったので、毅然としていたと言うのです。車中でわけもなくへらへらしている生徒たちに、「ここはね、あなたたち遊びに来たんじゃないの、勉強しにきたんだよ」と言って聞かせたそうです。

さて、家に着いて自己紹介。話しているうち、わけもなくニヤニヤするその態度に家内は一喝「何がおかしいの、人が真剣に話をしているときに、そのような態度は失礼なんだよ、もし君が話をしているときそうされたらどうなの、気分がいい?」と言う。

私も「ここは君たちの学校や家庭とは違うところだ、わがままは通らないところ、ここではここの学校の決まりを守ってもらう。君たちはいつもと違う体験をするために来たのだ」と言い聞かせた。この辺りから、彼らは緊張し始めた。

さてそのあと、炎天下の中で草むしり、そして薪割りをさせた。この薪割りは生活のためにやっている、そのための作業であることを説明。それからは彼らも黙々と作業をし続けていた。その作業はそれなりに頑張っていた。その間、休憩に風呂の入り方やマナーを教える。一人の生徒が一足先に土足で中に入った。即「馬鹿ヤロー土足で入るやつがいるか!」と叱り飛ばす。車に乗せてもらうときは「お願いします」と言うのだとも事前に教えました。これはよく守ってくれました。昨年私は相撲をして気合を入れていたのですが、今日は悠々亭までやっと歩いていくという具合で体調がよくないのです。体力勝負でなく彼らと一生懸命取り組む時間を作ることができました。

腹が減ったのでしょう、夕食を彼らはよく食べました。話をいろいろとしました。「今は不況と言われる時代で、なかなか就職が難しいね。私が経営者なら、学歴があるなしではなく、明るく素直で礼儀作法ができている人を優先的に採用するね。だから今日のような体験は必要なのだよ」とも言った。

初めが肝心、あとからの修正は難しいものです。短い時間ですが、生徒はここでは今までのような勝手は通用しないと感じたことでしょう。そして、こんな大人もいることを知るだけでも勉強になったでしょう。夕食は家内もソフトに対応していました。短い時間の付き合いです、いくら言葉で言っても感じないこともあるものです。

   そのときの生徒に応じて、緩急自在に使い分けることが必要なようです。