2008.08.12
体験学習
森 紘一

8月8日(金)晴れ
 講演会の翌日、新津へ出て磐越西線で豊実へむかった。4日から中学三年の女生徒が3人、体験学習中だという。今日の午後から参加される先生を迎えて、マキ子さんが生徒と一緒に間もなく戻るそうだ。わたしの方がわずかに早く和彩館に到着した。

 賢太郎さんは一昨日、きわどい体験をしていた。足を踏み外し崖下へ落ちた生徒が紙一重で救われたできごとを、「生徒も自分も生かされている」と口にした。重い言葉だったが、実感がこもっていた。確かに、佐藤賢太郎とコスモ夢舞台は数々の修羅場をくぐり抜けているが、今まで無事故できたことは幸運というより奇跡に近い。

 午後2時過ぎ、マキ子さんが先生と生徒を連れて戻ってきた。黒いジャージ姿の女性は、明るく闊達なベテラン教師のようだった。

 桃源の湯のアスレチックコースは、ロープを伝って20m崖下へ降り再び上るハードなトレーニングである。生徒3人に続いて先生も往復した。ギブアップした者はいなかった。

 次は薪割りに挑戦した。指を擦った打撲や足をすりむく小さな怪我はあったものの、ハンマーでノミと楔を打ち続け大きな杉の木を割った。生徒も先生も、かなり息はあがっていたが、達成感はあったようで顔中の汗が光っていた。

 先生が戻られた後、自分たちの手で割った薪で風呂を焚き、さっぱりとした様子で出てきたまではよかったが、目を合わせると言葉がなかった。賢太郎さんはさっそく、「こういう時は、お先にありがとうございましたと、声を出さなければだめだよ」、と一喝した。

 大きな声ではなかったが、「お先に失礼しました。ありがとうございました」、とこだまが返ってきた。素直な子どもたちだった。

 子どもたちにとっては最後の夜、賢太郎さんとマキ子さんが夕食の席で穏やかに語りかけた。「また、いつでもいらっしゃい」。「ここが、自分の田舎だと思えばいいんだから」。

賢太郎さんのお母さんと野沢から通う叔父さん、それに愛犬のリキ、オールスタッフの家族的な情味は子どもたちの胸にも十分沁み込んだにちがいない。