2007.3.13
森 紘一

「コスモ夢舞台」と地域再生

 最近、「地域おこし」「地域再生」といった言葉がさかんに使われるのはなぜでしょう。それは、地方だけではなく都市部においても、地域格差が広がっていることと無縁ではないようです。少子高齢化が進むなかで、国の法令や交付金制度というような画一的な政策では、それぞれの地域の特殊性や住民の意思を汲み上げることは不可能です。むしろ、国の施策の失敗と自治体の対応の拙さが格差の拡大につながっていることの方が問題のようです。

地域再生のめざすべき原理・原則とは何なのか。本間義人氏はその著「地域再生の条件」(岩波新書)のなかで、概ねこう述べています。

第一に、すべての人々の人権(安全と安心)が保障された地域につくり直すこと。

第二に、人々がその地域の仕事(地場産業)で生活できるように再構築すること。

第三に、自然と共生できる持続可能な地域に再生すること。

第四に、そして最も重要なことは、地域再生の主役は住民自身であること。

これまで我われは、豊かな自然の中で「コスモ夢舞台」の建設作業と並行しながら農業を体験し、アートの創造と観賞やシンポジウムを通して県内外の人々と交流をはかり、ひいてはそれが地域活性化のお役に立てばと願ってきたわけです。我われの目的は、自立と自律の心構えで生きる意味を追求する生活空間づくりであり、地域再生ではなかったのです。ところが、わが道をいく「コスモ夢舞台」の内実をはかるには、地域の人々との共生は自然との共生とともに必要不可欠であると思いいたったのです(悠然として大自然の摂理に学ぶという賢太郎さんの言葉に象徴的です)。さらに、「コスモ夢舞台」の経済価値をどう創りあげていけるかが、地域の人々と我われの次なるテーマであると、私は思います。

今年の秋のシンポジウムのテーマ『日本の、個人の活力再生を考える』は、そうした背景から生まれました。一日目が「過疎化の中で田舎の活性化を考える」、二日目は「農業と食」となっています。我われも、“今日の切実な問題点を地元の現状において自分たちで考え、具体的にどうすべきかを語りあいたい”と考えているわけです。地元の人々との活発な意見交換が期待されます。

団塊世代の退職者急増で騒がれている2007問題の対策として脚光を浴びている「ふるさと回帰支援センター」では、地域の住民や自治体のナマの声を知ることはもとより一定の成果をあげることも難しいのではないでしょうか。(終)