2010.06.01
第17回EU・ジャパンフェスト報告書に思う
佐藤賢太郎

コスモ夢舞台をNPO法人化にして、その目的を「地域のそして個人の活力再生を人との交流によって行う」ことを明記した。

私はEU・ジャパンフェスト日本委員会から多くの良い刺激をいただいて参りましたが、EU・ジャパンフェストの報告書は私たちのしていることを再確認すことでもあると考えています。コスモ夢舞台は里山アート展、田んぼ夢舞台祭りの芸能、景観つくりと農、体験教育など、いろいろな事業を都市との交流をもって行っている。

 さて、EU・ジャパンフェスト日本委員会の古木修冶 事務局長は報告書の冒頭に不況の中で続行したヨーロッパの芸術活動を伝え、さらに私たちは本当に「芸術」を必要としているか、と問いかけている。私はこの点について、浅学なことを承知で(私たちの行っている実践と重なると思えるところだけ)素直に考えを述べたいと思う。

政権交代によって、文化活動についても事業仕分によって無駄を省くという観点から予算は削られてきているようです。不況の中で文化活動が本当に地域活動に必要なのか問われているのではないか。それは国ばかりか、地方行政もその件について同じように考えてはいないだろうか。

 今、少子高齢化の時代を迎え、全国の過疎化地域では何とか地域の生き残りを模索している。地方都市でも活力ある地域社会にしようと懸命である。まさに、私の住んでいる地域は年々人口が減少している地域ですが、その中で元気に活力ある生き方をしようとコスモ夢舞台を立ち上げてきた。と言うより、仲間と共に元気で楽しい空間を作ろうと歩んできたと言うのが本当だろう。

 豊実という地域は高齢化の上人が少ない、また観光地でもない過疎地で、何もないというところが特徴と地元の方が言っているようなところである。そこを魅力ある田舎空間として、どのように創造するか、こう考えて夢を描くことが私は芸術ではないかと思っている。絵画や彫刻、音楽、芸能などだけが芸術ではない。何もないところから生んでゆく、創造してゆくことが芸術なるものの由縁だろうと思うからです。

コスモ夢舞台の活動の中で里山アート展を地味ながら開催してまいりまいりました。その結果、荒れている風景が、田んぼを初め河川の景観が、一年一年美しくなってまいりました。アート展によって都市の人々が集まるようになっております。また、地元の方々が集まる環境を整備し、田んぼ夢舞台祭りを開催することによって、地元参加型の新しい風も起こり始めています。今年はアートや芸能だけではなく、農を希望する若者も集まる兆しが出てまいりました。

 この地域にはなくてならない農のあり方を実践しながら思考しております。作家にはさまざまなタイプがあってよいと思いますが、ここにおける私の目指すアートは、それこそ高尚な芸術ではなく豊かに田舎に生きる形を作る創造作品であります。

 こんなところには住んでいられない、都会へ出るしか道はないと選択するのではなく、ここに本来人間が豊かに生きる空間があるのではないだろうか。今求められているのは、そういう舞台を創ることだと思う。その事業遂行にあたり、各機関からの助成金は私たちにはなくてならないものであったことは確かである。

 さて、古木修冶さんは芸術活動にも求められる「人間力」と言っていました。夢や理想を描けたとしてもこれを実行することはとても簡単な事ではありません。私は、小規模ながら桃源郷作りをここまで実践してきた主宰者として、「人間力」の必要さを重々感じております。地元において、こちらの思う理念が伝わらなかったりすることが多々ある中で、どう対応するのかそれこそ人間力が問われるのであった。

また私などの行っていることは、芸術活動というレベルではないかもしれませんが、芸術とは人間がどう生き、夢をどう創りあげてゆくか、それを考え形に表してゆくことで、その活動をしているとだけは断言できるつもりです。

コスモ夢舞台がここまでたどり着くには、多くの方の善なる力の結集がなければならなかった。つまり、表には出ない人間関係が極めて大きい要素を占めていることは言うまでもない。いろいろな方との対応力が求められている。集まる人間も他に対して対応力がないとそこにはいられなくなることもあるだろう。私と集まる人の「人間力」が問われ、いままで大きな力となってきたと思える。成功への道は、これからも人間関係のバランスが重要だと感じている。あたりまえのことですが、年々歳々近づく人もいれば、離れる方もいるだろう。

ないものの中で創る楽しさは、まさに彫刻作品を制作するのと同じであります。無から有を生み出してゆくことなのです。

有能なものは行動するが、無能なものは講釈ばかりする(バーナード・ショー)。コスモ夢舞台を推進する上には、理念と実行が必要である。強い理念がなければ企画も立たないし完遂することはできない。まず、行動が先であると思う。

最後に古木修冶さんは、トルコで出会った現代アート展で感じたこととして、私たちが見失いがちな「人間らしさ」を取り戻そうとするエネルギーが存在していると書かれていました。コスモ夢舞台は、まさにそのステージでもあります。時の経過とともに出会う人も変わりますが、今年NPO法人化した事により何ができるか、その作品つくりを皆さまに見ていただきたいものです。そして、より良い変化の年にしたいと考えています。