2007.11.06
里山アート展とシンポジウム
森紘一

11月3日(土)晴れ

 浦和で森幹事長、大塚さんと合流。朝の7時前だったが、さすがに行楽シーズンの東北道はかなりの交通量だった。「コスモ夢舞台2007」秋のメインイベントは、4回目となる里山アート展とシンポジウム。今回のテーマは、大きく「日本の、個人の再生を考える」。さて、お客様は大勢みえるだろうか?                     

作品つくりに追われた10月初旬の豊実を思いだす。それにしても、今年の夏は暑かった。そして長かった。英夫さん、大塚さんたちと悪戦苦闘したあの時の日ざしも夏だった。  「友よ」、「千手観音」、「再生」、それぞれにつけられた作品名を並べると立派な三題話が書けそうだ。

 磐越道の西会津インターを降りて、ほどなく阿賀野川をまたぐ紅葉まっさかりの新渡大橋を右手に眺めるあたりから、前を行く所沢ナンバーの車が気になりだした。「多分、若手の石彫作家Aさんではないか?」という大塚さんの勘は冴えていた。昨年に続いて、木製のオブジェで出品参加されていた。遠路はるばる、ありがたいことである。

 「和彩館」には10時半前に着いた。室内はすでに、プロジェクターのスクリーンが立てられ、J-Bandサンタハウスとスタートラインの音楽器材のスタンバイも終わっていた。賢太郎さんと御沓さんは11時開演のシンポジウムの準備で落ち着かない様子だった。我われも、さっそくビニールシートで簡易の屋根を張り、昼食のソバ券を用意して受付台を設営した。定刻まえには、桐山さん、時崎さん、飯野さん家族、藤野さんと友人、列車組の大内さんと妹さん、古屋さんと顔ぶれもでそろった。

 第一部のシンポジウム、「田舎の活性化を考える」は定刻に始まった。パネリストは、EUジャパンフェスト日本委員会事務局長の古木修治さんとNPO奥阿賀ネットワーク事務局長の神田昭平さんのお二人。司会進行役は佐藤賢太郎さんだった。約30名の会場には、奥会津書房の遠藤由美子さんやEUジャパンフェスト日本委員会の箱田さんの顔もみえた。

諸外国の例をひきながら日本と比較し、個人の自立と生き方の問題として元気になる方法や田舎の活性化も考えていこうという古木さんの発言はさわやかだった。NPO法人として体験型の学習旅行を進める神田さんからは、地域の活性化のためにもコスモ夢舞台の体験学習の継続と充実は必要だという励ましがあった。
  厨房のマキ子さんとアシストのIさんは、ソバ打ち名人と共に大忙しだった。音楽仲間のお友達のMさんや水原のKさんの奥さんも助っ人役を買っていた。生バンドの演奏でフォークソングを聴きながらソバで昼食というのも、ユニークだが素朴な味わいがあった。
 昼食後には、阿賀町の神田町長から激励のご挨拶があった。おなじみの澤野県議会議員もご挨拶に見えた。地方自治体の方々の応援は、我々の活動や田舎の活性化を考える上でもありがたいことである。

 今年は和彩館の前で、地元農家の皆さんの農作物の即売も始まった。里山アート展会場の即売小屋といい、地元の皆さんと「コスモ夢舞台」の連携も一歩進んだといえるようだ。 シンポジウムの時間帯と重なってしまったが、アート展の会場では地元の地域おこしグループによる、よさこいソーラン踊りのイベントも行われたようだ。

 第二部、「里山アートシンポジウム」は午後2時半から始まった。進行役の佐藤賢太郎さんから、スクリーン上でそれぞれの作品紹介があった。プロ作家のYさん、Sさん、Aさんもそれぞれに出品参加のいきさつや感想を述べられた。ふくろう会々員の森幹事長、大塚さん、桐山さん、そしてわたしも作品つくりの思いや感想を語った。         
  地元の人々の協力で会場周辺が年々きれいになり、地域の活性化にもつながってきた。来年は5年目でもあり、新たな企画も織りこんで、春から時間をかけて地元との連携を考えていきたいものだ。「アートによる地域おこしは可能か?」。長年の課題に、わずかながら明るい兆しが見えてきた。

新鮮な鮭を半身に開いて盛りだくさんな野菜と炒める鉄板が二枚、アルミホイルをかけられて「滔々亭」の囲炉裏にでんと座っていた。地元の魚屋Iさんが、村上であがった鮭を二本、わざわざ運び込んで調理された一品だという。古木さんが自ら料理したという豚肉のスライスも大皿に盛られていた。なんとも豪勢な晩さん会だった。今宵集まったラッキーな20数名は、美食と旨酒に酔いしれてしまった。               
  さらに、一座を魅了したのは、瞬きもせず丸い目を見開いて、あたりを見つめる生後10か月というHさんの赤ちゃんだった。夢追い人たちの喧噪のうたげに清純な天使、まるで絵画のような温もりのあるコントラストが面白かった。かくして、石夢工房の屋根裏部屋は10人が雑魚寝するいびき大会となった。

11月4日(日)晴れ

 いつもよりは緩やかで、6時起床。7時からアート展の会場で足踏みの脱穀作業が始まった。藤野さんの指導で、片足でペダルを踏みながら両手で稲を絡ませる作業は、4〜5人で入れ替わり立ち替わりやったがはかどらなかった。ようやく半分終えたところで朝食となった。

 シンポジウムの二日目、「農と食を語りあう」は午前9時からはじまった。パネラーとして登場したのは、進行役の賢太郎さんとは高校時代の同級生という喜多方の専業農家Hさん、日出谷で農業法人を立ち上げたSさん、そしてふくろう会の藤野さんの三人だった。
 国の施策や補助金に頼らず、小規模でもお客様においしいと喜ばれる米つくりを続けていくほかない。特に山間部の地域では、米だけでなく大豆や麦で自給率を引き上げるような集落全体の営農を進めていかなければならない。農業を法人化することで、収益を上げられる企業として育て、都市部からの若手労働者の求人や地域の活性化にも積極的に取り組んでいきたい。パネラーの皆さんからは生の声が続いた。             
  農と食については、我々の身近なテーマでありながら、抱える問題点は複雑で大きい。簡単に答えが出てくるような問題ではないので、これを機会に継続的に話し合っていきましょうということになった。

昼食後、地元の若者とコスモ夢舞台の共同作業に立ち会うことになった。里山アート展の会場付近に桜を一緒に植えるという景観つくりだった。残念ながら、帰宅組の我々は作業参加することはできなかったが、賢太郎さん、御沓さん、藤野さんの三人が地元のお助けマンFさんと6〜7人の若者に混ざって植樹に参加した。
  磐越西線の線路沿いに10本の苗木がすくすくと育って、里山アート展の会場に文字通り花を添えてくれることを願いながら豊実をあとにした。(終)