2006.07.02
新しい循環型社会

生産したものを金銭を介在して消費するという一方通行的生活習慣の中で長年過ごして来た人間が、豊実にしばらく住んでみて感じることは、すべてのものが循環によって成り立っているということである。そこには、金銭的な話は前面に出て来ない。

建設途中ではあるが、一応、入浴できるということで、コスモ夢舞台の施設の中で、今、もっとも話題性のあるのが石夢工房の傍の露天風呂である。
何しろ、1メートル余りの立方体のボイラーに山からのもらい水を入れて、薪で沸かすという代物だから、絶景を眺めながら温泉気分を味わうことはできるが、大量の薪が必要である。
今までは、せいぜい民宿体験の生徒さんや3連休の建設作業にふくろう会の皆さんが来たときに沸かすくらいの話であった。

ところが、このボイラーの提供者(製作者)であるKさんがまず、泥のついたいかにも取り壊し現場から持ってきたというような長い廃材をトラックで持ってきてくれた。

次に、地元では貴重なコスモ夢舞台の応援団の一人、S製作所のSさんから連絡があった。
自分の会社で木材のプレカットをした切れ端が毎日、5パレットくらい出るのだが、単純に燃やしているだけなので風呂焚きに使ってもらえませんかと。
早速、前述のKさんにお願いしてマキ子さんと3人で2回運んだが、毎回、往復3時間の道のりをKさんにお願いするのも大変だなということで話は終わっていた。
そこへまた、Sさんから電話が入り、いろいろ考えたが、会社の行き帰りにSさん自身が会社のダンプを使って、週2回運んであげますとのことであった。

こうなると、まず、泥のついた長い廃材をチェーンソーで切りながら環境整備である。
大野さんがいつも言っている「廃材をもらうということは、すべてをもらうということだ」という意味が身にしみて分かるなと思っているところへ、Kさんから今度はきれいに切り揃えた角材の薪がトラック一杯届けられた。どうも、前の廃材のことが気になっていたらしい。
これでは、毎日、沸かさなければ石夢工房の置き場も作業ができなくなってしまう。

ところで、Sさんから提供される角材は切れ端といっても立派なもので、篆刻をされる人や仏像を彫る人から見ると宝の山だそうで、まさに山の中から大切そうに宝を選んで行かれる。
その中の一人、仏像彫刻が趣味のMさんご夫妻がお見えになり、木材を選んだ後、炎天下の中で乱雑に置かれた角材を一つひとつ奇麗に積み上げられた上で、入浴をして行かれた。

ここを訪れる人たちのボランティアでもない NPOとも違うこうした不思議な働きは何なのだろうかと考えてみたが、元をたどれば手作り・手弁当で10年間やってきた、ふくろう会の皆さんの精神と一脈通じるものがあることに気が付いた。

お蔭様で毎日、良い汗をかいた後、露天風呂に入らせてもらいながら、これこそ、新しい形の循環型社会と言っても過言ではないのではなかろうかと思った。(K.M)