2009.01.17
冬の景色4
佐藤賢太郎

私の住む山間地の冬は雪が多く、家の周を動くことも容易ではない。不自由な生活で動きが鈍くなる。朝6時、まだ暗い。玄関から道路までスノーダンプで雪かきをしなければならない。長靴でも埋まってしまうほどの雪で外に出られないのでこの作業をする。朝ようやく終ったと思ったら昼にまた雪が積もり同じく雪かきをする、そしてまた夕方同じ作業をする。今年はまだ屋根に上がって雪下ろしはしていない。ともかく雪国は重労働がセットにして暮らしがある。この繰り返しでここ1週間青空を見るのはめったにない。 
   しかし自然と対面する最もよい季節ではないかとも思う。自然から学べと大成された方の言葉にあるように私も作品を作る力を得られたらと思う。

彫刻する仕事場、石夢工房まで冬の間は歩いている。滑りながら歩くのだから足腰のトレーニングになろう。そのとき愛犬高齢のリキと一切未満のチロを連れてゆく、チロはリキにじゃれあいながら楽しく元気に歩いている。午前中の仕事が終るとまた家まで片道15分ほど歩いて帰る。午後は犬を家において同じく仕事場に行く。5時を過ぎて帰宅するのだが冬の夜道を歩くときとっても感動的な風景を感じる。

雪の上を長靴で歩くのでキュキュと雪を踏みしめる音がする。楢の木の枝に積もった雪は水墨画の様にきれいである。杉の木立群は暗く、その合間から少しの空が見える、街路灯の反射からうっすらと赤らんで映るのだろう。下り坂を歩くとやがて暗闇の中にも阿賀野川が見える、オレンジ色の街路灯に川面が見え、点々とした各家庭の明かりが見えてくる。静かな静かな時間である。

この郷里に帰って3年目になるがまだ自然が作品を作ってくれるに至っていない。何かを感じ、掴めたら思う。今制作しているのは縄文人の首である。