2005.08.31
大塚秀夫
卒業生を夢舞台に連れて行って

初めて卒業生とコスモ夢目舞台の作業に参加した。
T君は社会人1年生、H君は働きながら大学で学び、一番参加を渋っていたY君の3名の卒
業生たち。3人は、3年生のとき勉強を教えて欲しいと、私のところへ来た生徒である。
早速、放
課後の空いている時間、毎日、微積を教えていた。卒業するまで続いた。
あるとき、新潟でアートを制作したいと里山アート展の私の夢を語った。
素人でも作家として参加できるアート展であること、たんぼに作品を置いてSLから見る企画
など
話した。

岡本太郎氏も「芸術は爆発だ」と言う。それが里山アート展では実践できるんだ。中学校で
様々
なネガティブな出来事に翻弄されてきた生徒たち、特にT君は、「先生、おもしろいよ」
とすぐにのっ
てきた。


今年、卒業したら、夏期休暇に実行だと約束した。
ついにその約束の日が来た。
早速、朝飯前の仕事に取り掛かる。いま、石夢工房は鉄骨を組んで、私たちがいつでもア
ートの制作ができるように建築が途中まで進んでいる。まずは、木材を運ぶ作業。彼らは、
黙々と指示に従いこなしていく。


朝食後、我々は石夢工房の鉄骨に外板を固定するための角継手をアーク溶接の作業を
行う。
私は初めて溶接を現場でやるはめになった。

授業でアーク溶接を教えてはいる。しかし、鉄骨で建築中の現場は、何もかも勝手が違う。
授業
では、安全のため感電事故防止に全神経を使う。しかも、溶接台の上で練習用の
軟鋼板を下
向き溶接するくらいである。感電事故はまず、起こり得ないという安心感があ
る。ところが、はじめ
ての現場で、私にはチーフ経験もない。鉄骨そのものが母材、そこに角
継手を溶接するから、じか
に電流が作業する私に流れるのではないかと不安になる。

どうしようか、安全であると証明してくれる経験者は誰もいない。イチかバチかやるしかない
瀬戸際に立たされる。

教育とは、本来、命がけのはずである。教える側にとっても、教えられる側にとっても真剣
勝負である以上、教育する側が受ける側に対して気をつかったり、適当なところで、手を
抜いたりすることは許されない。


卒業生に里山アート展への参加を呼びかけたら、素直に豊実まできてくれた。お盆の貴
重な休
暇を使っての炎天下での作業であったが、今回は、作品を制作するまでにはいた
らず、まず、アト
リエを建てることから始めなければならなかった。
しかし、彼らを連れて行ったことで私は教育の何たるかを教えられた。教え子たちは、今ま
で見た
こともない、おじさんたちの夢に挑む世界に入り、びしびしと言われながら、実践教
育を受けた。

彼らは学校や親ではしつけられないことを体験した。

これは、卒業してもつき合う場がここにあるから出来たことである。まさに、コスモ夢舞台は
感動ある
人間交流の場であると思った。