2015.06.29
第3回ホタル音楽祭の風景
森紘一 

 6月27日(土)午後4時過ぎ、今にも降り出しそうな梅雨空が重く立ち込めている。

西会津に近い新潟県東蒲原郡、JR磐越西線の豊実駅から歩いて5〜6分のところに

ホタル音楽祭の会場はある。秋には里山アート展の会場となるその一帯は、集落の墓地につながる一本の舗道をはさんで、左右に五面の田んぼ約3反が、まだ若い緑色の葉をなびかせている。 

会場左手の阿賀野川にかかる船渡大橋の朱色はややくすんで見えるが、会場奥の淡いクリーム色のドーム(マユという作品)や右手の木製遊具とベンチも色とりどりで、石彫作家佐藤さんの彫刻(鳥獣戯画)の道から続いている。蓮池やビオトープの観察ができる小川は、暗闇ともなれば、ホタルの舞が見られるにちがいない、そんな期待を抱かせるスポットである。 

里山アート展の会場中央、石夢舞台には濃いブルーの簡易テントが三張りとダークグレイのパラソルが並べられている。それぞれに音源ミキサーやスピーカー、マイクスタンドが覆われ、無数のコードがステージを這っている。 

4時半過ぎ、降り出した雨は時おり激しさをまし、風も吹きつけて、見る間に周辺を墨色に変えていく。それでも、直前まで熱心に雑草の刈り取られた石畳の周回路は涼しげな白い帯に見えた。 

開演時間の5時直前、不思議なことに雨脚は急激に弱まり、音楽祭は予定通り進められていった。奥阿賀・魅力ある田舎つくり実行委員会代表山口啓治さんの力強い挨拶のあと、視察に見えた新潟県文化振興財団の評議員 徳永健一様から温かい励ましの言葉をいただいた。

プログラムは5組、第一回からご協力いただいている伊藤末五郎さんと斉藤春雄さん、吉田勝さんのギター演奏と歌ではじまった。続いてベテラン江川功さん、若手代表哀愛憂(あいらぶゆう)さんと進んで、クマガイマコトさんのギターと歌も雨上がりの山々にこだましていった。 

最後は、木綿子さん、KAT da Hide Poetさん、山下久樹さん、渡部恵美子さんの

歌とジャンベ(西アフリカの太鼓)、RAP、パーカッション、ダンスというコラボ・パフォーマンスだった。

 彼らの歌と語り、音と踊りは周りの自然に溶け込み、それが即興であるとはおもえない見事なメッセージ(この地の大自然に宿る神々にささげる感謝)を伝えてくれた。

雨模様のためか例年より少ないが、それでも国道459沿いの歩道に設けられた観覧席(50名近い、地元集落と周辺都市、遠方関東からのお客様)から最後まで惜しみない拍手が鳴り響いてやまなかった。 

終演にあたり、後援側を代表してNPO法人コスモ夢舞台佐藤理事長から、出演者と客席に感謝の言葉があった。午後6時半過ぎ、雨脚は再び強まって、夕闇を包みはじめていった。