2018.09.20
殻を破る
御沓一敏 

1泊2日で豊実に行ってきた。「里山アート展15」の実行委員長・佐藤賢太郎さんから、展示館2階の襖4枚に、枕草子第一段(春はあけぼの……)を筆で書いて欲しいと言われたからである。

  以前、我が家の廃棄寸前の襖2枚に大きな字を書いたことがある。佐藤さんにはこれを見ていただいたことがあるので、おそらくそのことが記憶の中にあったのではないかと考えられる。

いずれにしても、義務教育の習字の時間に書いた経験しかない自分である。

15年前から、豊実では随分いろいろな看板を書いてきたが、襖サイズで毛筆で字を書くのは初めてのこと。全く自信がなかった。

習字紙に何度も練習をしたがよい感じは掴めなかった。

いよいよ出発時間の迫った三日前に、実際の襖紙に看板を書く時のように物差しで測り、割り出し、線を引いた枠の中で4枚を書いてみた。

それを学生時代習字を習っていた娘のところへ持って行き、できるだけ辛口の評をお願いした。

 開口一番「下手ではない。上手で綺麗な字だが面白味がない。習字教室のお手本の様だ」「字のサイズが一律で、墨を何度も筆に付け足したのか、黒一色でべたっとしていて勢いがない」と手厳しいがありがたいアドバイスである。

娘に指摘された点を踏まえて、一切定規を使わず、割り出しもしないフリーハンドで豊実の本番に臨んだ。
さていよいよ筆を持った瞬間、襖の上には乗れないことにきづいた。厚手の板を横に渡してその上で書く姿勢をとるしかなかったが、不自由もまた良し、結果はまずまずであった。佐藤さんはじめ皆さんからもうれしい言葉をいただいた。

捨てるような物をも使い切る佐藤さんに、力仕事はできなくても筆一本くらいは持てるでしょうと言われているような気がした。

自分の癖・欠点「他人様によく思われたい。そのために小さくまとめてしまう」という殻を少し破れたような気がする.

  生きている限りダメということはない。まだまだ自分もできそうだという希望が湧いてきた。
感謝である!