2010.12.01
防災ツーリズムに参加して
森紘一

 1127日(土)午後1時半、磐越西線豊実駅前の公民館で『心の絆ツーリズム 阿賀町との交流会』と書かれた耳慣れない歓迎・説明会が行われた。

 埼玉県の蓮田市とさいたま市、さらに近郊の東京、横浜から一般市民(男女計10名)が招聘された。会場には阿賀町役場の職員、地元鹿瀬の消防団員も並び、ふたつのNPO法人(NPOにいがた奥阿賀ネットワークとNPO法人コスモ夢舞台)の関係者、スタッフを合わせると総勢33名の集会となった。

主催のNPOにいがた奥阿賀ネットワークは、奥阿賀体験教育旅行の運営に9年の実績をもつ行政と民間の連携した活動法人で、今回あらたに‘防災’をテーマに都市部の人々を招いて交流を図り、阿賀町のPRと防災ツーリズムの可能性を探ろうという狙いがあったようである。

主催者側のNPOや阿賀町の歓迎挨拶は、それぞれに人とひとの交流は“平時の心の絆づくり”が重要である点を強調されていた。それを受けて、交流都市の代表者からは「思いがけない歓迎を受け、あたたかい受け入れ準備の話を聞いて感激している。我われも戻ったら地元の人々に報告し、まさかのときにも心の通い合う交流を進めていきたい」と返礼があった。

続いて、阿賀町が農家民泊などで都市部の中・高校生を受け入れている体験学習の実例やコスモ夢舞台がアートを軸に都市との交流をはかって地域の活性化につなげている事例などが代表者から発表された。

新潟県の「防災ツーリズム」は中越地震や中越沖地震の教訓を生かし、いざというときに安心・安全な避難地域として首都圏の皆さんに安心して避難いただけるような地域づくりを目指すということだが、阿賀町は実績と意欲の面でかなりのアドバンテージをあげているようだ。

これからは、いかに受け入れ態勢を整備、強化して維持していけるかが課題であろう。阿賀町役場とふたつのNPO法人の緊密な連携やPR方法も重要なポイントになりそうだ。

第2部として用意された農家民宿「和彩館」での防災体験や翌日のプログラムには、実に楽しいメニューが組まれていた。石釜で焼いたピザ、釜で飯を炊き、杵と臼で餅をつく、電気、ガスを使わない食文化やロウソクの灯りをたよりに薪で涌かした風呂に入浴するといったことは、まさに災害非常時むきの貴重な体験だった。しかしこれが、ごくあたりまえの日本人の生活文化だったことを日常我われは忘れている。

それだけに、こうした内容をおりこむなら首都圏への呼びかけは「防災ツーリズム」という表現以上に「見直そう、日本の生活文化」というメッセージを込めて、婦人会や趣味の会グループから始めていくのもひとつの策ではないかと思う。

例えば、蓮田市と阿賀町が市民レベルの交流から“備えあれば憂いなし“という共通認識で結ばれて防災姉妹都市というようなことになれば、そこに都市と地方の新しい融和が生まれるだけでなく、古き良き日本文化再生の道筋が見えてくことにもつながってくるのではないだろうか。

晩秋の豊実で、いろいろと考えさせられた一泊二日の旅だった。