2010.04.10
あるがまま受け入れることの大切さ その1
大塚 秀夫

3月26日14時40分日本を出発して、アテネ国際空港に到着したのは、27日の0時(ギリシャ時間)を回っていた。パパスヤノプ-ル景子さんがお出迎え下さった。

ホテルに向かう40分間の専用車の中で、景子さんから伺うギリシャの話に私は自然と惹き込まれていった。

ギリシャは地中海性気候ですから日中は温かいが、昼夜の温度差があるため、日中は薄着でも夕方は上着を用意してくださいと説明を受けながら、ホテルはアクロポリスのすぐ近くのヘロディオンホテルに到着。

翌朝、お天気は快晴である。朝食を早々に済ませるとアクロポリスとアクロポリス博物館の見学であった。

アクロポリスは新石器時代から人が住んでいたという岩山であり、紀元前5世紀の黄金期には芸術家たちの傑作が続々と誕生した場所である。

紀元前500年前からアテネに住むという通訳の景子さんは言う。

「アクロポリスは、高いところを意味します。ギリシャは太陽神であるであるからパルテノン神殿の正面は東側(前門とは逆側)にある。東側の正面が本来入り口のはずが、アクロポリスの丘では東の正面には前門はない。アクロポリスの丘はなだらかな岩が西側だったから西側に前門を作った。」とのお話を伺った。

そのことを聞いた時、佐藤さんの作品に『分解した顔』が浮かんだ。実は『分解する顔』は、もともとそれとは違う作品を作ろうとしていた。ところが石が二つに割れてしまい、そのとき閃いたことが、見て美しいとか癒されるとかいう作品ではなく、内なる人間の心情を表現しようと思ったという言葉だ。かえって石が割れたことによって素材が限定されたが故に新しい作品が生まれた。

アクロポリスの入口は西側のなだらかな坂を上がっていくと前門がある。前門を抜けた正面には右側にパルテノン神殿。左側にエレクティオン。その間は広い空地になっている。
                       
   パルテノン神殿はこの位置からが、最も美しい。 パルテノン神殿の姿は、まさに芸術作品であった。

紀元前500年にパルテノン神殿を制作した建築家も現代の石彫家も大自然に対峙するとき、石という素材をあるがままに受け入れたときに芸術の美が醸し出されるのだ。

パルテノン神殿はすべて大理石を運んでアクロポリスの丘に建造された。修復のために神殿の中に足場が所々に組まれていた。

あの柱はドラムのような大理石をいくつも積み上げたものだ。これが1本の柱のように見事にドラムの接合面が完璧に重なっていた。

修復現場に石の車輪のようなドラムが無造作においてあった。ドラムの中心に直径25cmくらいが円形状に凸凹に細工が施されてあった。

「この凸凹はどうしてあるのか皆さんわかりますか。」と佐藤さんから質問された。
(さて、どうしてか皆さんわかりますか。)佐藤さんは説明してくれた。「石は接合面をぴったり合わせるのが難しい。だから、凸凹を作ることによって、石の接合面が合うのだ」と言う。

ぴったり石の接合面を合わせる知恵はギリシャの知恵から現代にも受け継がれてきていた。
ハーモニーという言葉がある。この言葉はギリシャ神話のハルモニアに由来する言葉で一致、連結を意味するそうだ。

石はぴったり合わせることが難しい。つまり一致・連結をあらわす「ハーモニー」に由来するのかもしれない。