2009.12.

2020.8.7
猿とホタルと豊実の自然
森紘一

 8月に入って関東地方もようやく梅雨明けとなったが、外出自粛で家に閉じ込められた今年の梅雨は本当に長かった。さらに九州の熊本や各地で起こった豪雨は、河川の決壊や崖崩れという大きな水災害となってしまった。
 前倒しではじまった「Go To トラベル」は政府の思惑外れで、新型コロナウイルスの感染は全国に広がっている。自然現象もそうだが、なぜこうまで我われは痛めつけられ、我慢を強いられるのだろうか。
 本来なら子どもたちも夏休みで、海や山は賑わうところだが、はたして人の流れはどうなるだろう。かつては我われも旧盆の頃には豊実に集まり、駅前広場の盆踊りに参加し、間近な対岸の花火を「滔滔亭」で楽しんだものだった。

 ところで佐藤さんによると、近年は里山に出没する猿に畑があらされる被害が続出して、集落の皆さんも頭を悩ませているという。対策として、「電気柵の設置などを試みたが、そんなレベルでは防御にもならない。根本的な解決策は、猿が森の中で生活できるように人間の手で自然を取り戻すことだ。森林の保全や浄化、植樹という森づくりへの取り組みが必要である」という。
 そういえば、今年の「アートフェスタ」の第一会場となった朴木坂を思い出す。再現された杉木立に囲まれた急斜面の田圃には、明るい陽ざしが差し込んでいた。野生生物との共存のために、先人たちは創意と工夫を働かせていたに違いない。

 NPO法人まちづくり学校の皆さんが豊実へお出でになった夜(8/1午後10時頃)、里山アート展会場付近の田圃でホタルを一匹発見されたという。シーズンオフのご対面で、皆さんの感激ぶりが目に浮かびます。これからもホタルの発生を維持するため、環境整備に努め、ホタルの観賞スッポットを豊実の夏場のウリにしていきたいと、佐藤さんも意を新たにしています。
 佐藤さんの口ぐせではないけれど、「豊実には何もありません」。豊実に観光名所はないけれど、山のお猿や川辺のホタルに巡り合える豊かな自然が育まれています。生きとし生けるものの故郷と言えるかもしれません。