2009.12.

2015.12.19
佐藤さんとモロッコ
森 紘一

  来年(平成28年)4月、佐藤さんはモロッコへ出かけるという。我われには何とも唐突な話に聞こえるが、ご本人はいたって真面目である。 

 モロッコといえば、初めての日本語字幕付きトーキー映画『モロッコ』や名作『カサブランカ』を思い出すが、わたしの場合は、きわめてなじみが薄い。

ウィキペディアによると、モロッコはアフリカ北西端に位置する国王を元首とする立憲君主国家で、正式名は「モロッコ王国」。東はアルジェリア、南は西サハラ、北はスペインの飛び地と接し、西に大西洋、北は地中海に面している。面積は日本の約1.2倍で、人口は約1/4だという。

 ヨーロッパ、アフリカ、アラブをつなぐ交易の十字路として重要な役割を果たしてきただけに、地域によってかなり異なった文化や習慣を持っている。また、その地理的な風土や気候から、海沿いのリゾート、アトラス山脈のスキーリゾート、南部に広がるサハラ砂漠と変化に富んだ魅力的な観光コースが揃っている。 

 とはいえ、佐藤さんのモロッコの旅は観光が目的ではなさそうだ。

今年の10月、フランス人のRachidさん(60歳)がウファーとして豊実に一週間ほど逗留された。その時の様子は、コスモ夢舞台のHPに佐藤さんが書いている。

現役時代はフランス大蔵省の役人で、今はモロッコに在住。日本には7回目という知日派のインテリで、黒沢明監督の作品を良く知っていて、ユーチューブから『生きる』を開いて見せてくれた。 

また、マキ子さんが感心するほど料理もお上手で、レパートリーも豊富であるらしい。
行動力があり、ユーモア―を解する洒脱な人柄に、佐藤さんもマキ子さんもすっかり魅了されてしまったようだ。

Rachidさんの逗留は、里山アート展の撤収と打ち上げイベントの最中で、豊実に出向いた我われも佐藤さんから紹介をいただいたが、いつも笑顔の大柄な人という以上の感想は抱かなかった。ましてや、その後の佐藤さんとの意気投合ぶりや、ウファーであるRachidさんから佐藤さんがモロッコに招待を受けるという事態の展開は予想もつかなかった。 

佐藤さんによれば、「こんな素晴らしいウファーに出会ったのは初めて、これ以上のウファーは出ないだろうと思う」ということになる。

ある日、彼のつくったトルティーヤ(スペイン料理)を食べながら介護の話をしていると、「姥捨て山のナラヤマの言葉も出ました。私たちはすごいと驚いてしまった」さらに、「日本の過疎地に住みながら、こうした出会いや体験ができるのは、『一期一会』を大切にする気持ちがあるからです」と述懐している。

そして今回のモロッコ行きは、「異文化に学ぶこと、そこに住む人々の暮らしを見ること、感動ある人間交流をすることを目的としている」と結んでいる。 

今回のモロッコ体験は佐藤さんの創作活動やコスモ夢舞台のこれからに、新しい風を呼ぶことになりそうである。我われもまた、それを楽しみに、新しい年に向かって佐藤さんのご健勝を祈っていきたいと思う。