2009.12.

2020.4.24
豊実に差すひかり
森紘一

  新型コロナウイルスの感染拡大は弱まる気配がない。今回のパンデミックは死につながる恐怖だけでなく、思わぬ毒性をともなっている。
 治療薬やワクチンのないなかで、我われのできる対策は外出を自粛し、人との接触を極力避けるというだけである。今回のウイルスの厄介なことは、人とひとを引き離し分断を強いるという副作用で人間を苦しめていることである。
 人は一人では生きていけない。助けあい、支え合うという人間社会の基本的な日常生活が破壊されかねない。家庭も、国の経済も、成り立たないことになってしまう。さらに日本だけの問題ではなく、全世界の地球規模の災禍である。

 そこで、“これまでの常識や尺度を捨て、主義主張や国益を離れて、新しい価値観を創造するチャンスである。” “人間の英知を結集し、国家を越える新しい連帯をつくる好機だ。”と、著名な学者や作家の警告やインタビューが新聞に掲載されている。

 佐藤さんはすでに、日本の豊実という過疎の集落からささやかながら情報を発信し続けている。今年コスモ夢舞台の「里山アート展」は17回目、「奥阿賀国際アートフェスタ」は2回目の開催となる。 “循環・再生・創造”や“アートと生活”はイベントのテーマであり、過疎の集落を活性化させるキーワードである。同時にそれは、あるものを生かし、足ることを知る暮らしや生き甲斐とは何かを知るワークショップにもつながっている。
 間もなく5/18日から「第2回奥阿賀国際アートフェスタ」は開催される(予定である)。はたしてその時、コロナの感染状況に合わせて、国の緊急事態宣言や外出自粛要請がどうなっているか予断は許されない。まして、外国人ウーファーの来日や日本人の複数県をまたぐ往来は厳しいかもしれない。移さない、移されないという“ステイ ホーム”は、相変わらず鉄則かもしれません。

 今の予定では、「第2回奥阿賀国際アートフェスタ」の会期は6/28日までとなっています。状況の許される方には一人でも多く、その昔そこに田んぼのあった山林の空間で絵画や彫刻、作品のオブジェと向き合い、米つくりや日本の伝統文化について諸外国の人びとと語り合っていただきたいのです。
 近代的な都会生活や科学文明を離れた過疎の小さな里山に、そして多くの人々がそこに集うことに、新しい時代を生きるヒントがあるのではないかと、我われは希望のひかりを感じているのです。