7月13日―2
焦りと発見と笑い
佐藤賢太郎

 制作日数は減ってゆくのに私の望む道具がちっともそろわない。景子さんによればバシリーはわたしが困っているのは解っているらしい。日本人ならば日曜であろうが駆けずり回るのが当たり前である、ところが今日は日曜日、すべて明日明日となってしまう。

 もっとシャープなカッターがほしい、仕事が進まない。私の作品が中途半端で帰ってもいいのかと言いたい。後にこれをギリシャ語で伝えて頂こうと思います。

進まないのが解りながらも午後5に仕事場に出かける。太陽はぎらぎらものすごく暑い。仕事場のテントも役に立たず光が差し込む。テントを移動しようと思うがねじが取れない。よしずでも用意してくれたらと恨めしい。その時私は気が付きました。近くに置いてあるこの板を使って、よしずの代わりに使おうと思いついた。そしてやってみたら見事にテントの中は日陰になった。苦悩の中で発見したことです。手足がもがれたような中での制作は続くのである。切れないために切った石の粉が太ももに当たると熱くなってしまうほどです。キレるカッターがほしいと再三頼んでも手に入らない。このキレないカッターしかないならばこれをどうするかを考えています。

 そうしているうちに、あのイタリア人の助っ人がやってきました。体格のいい女性と別のイタリア人を連れてきました。相撲取りのような女性は私の作品の上に仰向けになりました。写真を撮るので私が石を彫るようなポーズをして欲しいと言います。昨日もそうですが、おおらかというか明るいと言うか解りません。みんな笑って写真を撮りました。今夜10時に食事においでと誘われました。ギリシャでは夕食は10時以後なのです。私は寝る時刻なのですが。でも明日私の体力では使いこなせない重いドリルで彼は作品制作を助けてくれるかもしれません。こんな期待して10時夕食に参ります。

追申

時間に行きましたが本人はいませんでした。そんなこと日本ではあるでしょうか。