2019.4.18
木に登った猫は
佐藤賢太郎

 私は毎日が忙しい。そこで、カセンが寂しがらないように猫を飼うことにした。カセンが北海道に行くことになり、猫がひとりぼっちになるので、我が家に連れてきた。猫の世話は大変であったが、やがて私は猫と一緒に寝るようになり、我が家はにぎやかになった。

 ところで猫が逃げてしまった。どこに行ったかわからない。3日も過ぎたある日、畑にいるとき猫の声が聞こえてきた。どこからの声かわからなかった。私は家内とカセンを呼び寄せた。
 昨日のことだというが、杉の木の35メートル上にいたのである。梯子をかけたがとても届かない。何とか降ろしてあげようとしました。ある方のアドバイスで消防所に電話した。消防車が2台来たが、とても手が出ないと引き上げることになった。営林署に電話したが駄目であった。するある方が、「腹がすいたら入りてくるよ。降りられないなら死ぬだけだ」と言った。このところ、個展の搬入で慌ただしい日々であった。その上、とんだことで忙しいことになった。
 後日談。翌日早朝、我が家で猫の声がした。あの声はミーちゃんに違いないと思った。しばらくすると、やがて木に登った猫が帰ってきたことが分かった。やっぱり猫は帰ってきた。