2011.02.20
小さな命
佐藤賢太郎

展覧会を前にアトリエで作品の梱包をしていた。一つのかごを整理していると、なにか温もりのあるズボンが入っていた。落ち葉や塵のようなものも付いていたので振り落とした。すると、ゴム毬のような丸い小さな塊がぽとりと落ちてきた。ごみだと思い、燃やすか捨ててしまおうかと一瞬思った。しかし、良く見ると鼠かなと思ったが、さらによく見るとリスだ、尻尾を見てそれが解った。

 死んでいるのかと思ったら、腹が膨らんだりへこんだりしている。生きていることは分かったが、触っても目を覚まさない。リスの体は冷たい、ということは冬眠をしているのだ。

そういえば、秋になるとアトリエに置いてある手袋にどんぐりが詰まっていることがある。冬眠のために食物をためている捕食である。何処かに棲んでいるとは思っていたが、こんなところいたとはいささか感動した。
   これも後で作品にしようと思った 。

 写真を撮って柔らかい紙や布で暖かくして巣をつくり、そばに餌も添えてそっとおいた。春になったら冬眠から目覚め、元気で生きてほしいと思った。小さな命に感動するひとときだった。