2017.01.10
豊実の冬体験  
古田 修一

 両親が豊実に移住して早いもので半年以上の月日が流れました。おかげさまで両親も、大きな病気や怪我もなく過ごすことができていて、これも地元での生活をコーディネイトしていただいている、佐藤先生ご夫妻を始め、村の方々の協力なしにはできないことと感謝しております。

昨年の夏には、5日間という長期にわたり滞在させていただき、私の子どもたちも、自然いっぱいの豊実の地が大好きになりました。虫取りに夢中になった夏の豊実。今度は雪景色になったまた違った豊実を是非見たいとの子どもたちの希望もあり、成人の日を含めた連休を使い訪問することになりました。本来であれば、新年の挨拶で、元旦から入りたかったのですが、あいにく私の仕事が元旦からということもあり、比較的時間の取れる、1月7日~9日までお邪魔しました。

自然の中での遊びを好む長男は、この豊実訪問が待ちきれなかったようで、毎日「あと何回寝たら新潟にいけるの?」と毎日のように私たち夫婦に尋ねるくらいでした。長男が少し悪さをすると、妻のいつもの一言が、「そんなことだと新潟連れて行かないよ」が決まり文句で、そういわれた長男は逆らうこともできず、素直に話を聞いているほどでした。

以前より、豊実は豪雪地域で、冬になるとかなりの雪が積もると聞いていました。そんな話を子どもたちに話すと、「雪だるまつくるんだ」とか「かまくらをつくろう」とか、話ばかり先行していました。そんな寒いところに行ったことがなかったので、事前に防寒具やスノーブーツなどを揃えて、準備万端でその日を迎えていました。しかし、大自然は分かりません。私たち人間の日頃の行いが悪いせいなのですが、雪も現地でも珍しいほど降らず、2・3日前に降った雪が多少残っている程度でした。

そんな楽しみにしている子どもたちの裏で、私はかつてないほどの仕事の忙しさがありました。塾という職業柄、年末年始は休みが取れません。年末は30日まで、年始は元旦から出勤しておりました。一日12時間の授業を8日間こなし、冬期講習が終わったのは1月5日。多少の気の緩みで、豊実訪問前日の夕方には、38度を超す熱を出してしまいました。働いている職員も、インフルエンザ感染が3名と、運営自体も楽ではない冬期講習でした。健康あっての社会貢献です。こんな状況では貢献したくてもすることはできません。改めて、自社の労働環境の見直しの必要性を痛感させられました。 

そんな状況下での豊実の訪問。一時は私の体調不良から、今回の訪問を見送ろうとも考えましたが、子どもたちの楽しみを考えると、ここは何とか行こうと、薬に頼り何とか熱を下げての出発になりました。重い荷物を抱えて、子どもたちも連れて行く。到底妻だけではなせることではありません。

実際豊実に到着すると、私の体調はさらに悪化。熱は測りませんでしたが、かなり上がっていたと思います。本来であれば、私自身が体験したことについて書きたかったのですが、妻や父から聞いた話をまとめてみたいと思います。 

豊実に到着したのは夕方の5時過ぎでした。電車が到着すると駅のホームから見える自宅から母が大きく手を振っているのが分かります。(それだけ自宅から駅は近くにあります)そんな姿をみると、なんだかほっとします。駅の地下道をくぐり外に出ると、そこは埼玉ではみることができない雪景色。雪かきで積み上げられている雪を見ただけで、子どもたちのテンションは上がります。

その日は夕方ですので、すぐに家に入り、夕食のしたくに入りました。私はその時点では高熱のためもうろうとしていましたので、すぐに休ませてもらうことにしました。両親には心配してもらい、薬や暖かくなる生姜湯などをだしてもらい、この年になっても両親のありがたさに感謝する気持ちでいっぱいでした。 

滞在2日目。子どもたちは外で雪遊びをしたいとの気持ちがまんまんで、朝から外に出て遊んでいました。私はしばらくの静養をとらせてもらい、妻と父に子どもたちをお願いしました。雪遊びのなかでも、子どもたちはいろいろな発見をしたと父から聞いています。

雪だるま作りなど、一般的な遊びもしたのですが、観察もしてきたようなのです。夏にカエルをとった「田んぼに行きたい」との長男の話に父が一緒に田んぼまで連れて行ったときの話です。雪をかぶった田んぼに、何かの足跡が。動物好きの長男は想像力を上げてきます。「あれはイノシシかな」「あれは猿だ」など、足跡からどんな動物がいるかを想像し始めたようなのです。大人からすると、適当な感じもしますが、幼い頃のそんな創造力を大切にしたいと感じる話でした。我が家では、テレビゲームなどは買い与えていません。(私がそうだったので)最近の幼稚生は結構ゲームはしているようです。それよりも、本物に触れさせたい。そんな想いからいろいろなところへは連れて行っています。山や海に行くことが多くあります。今回父が移住した豊実は、教育的に考えても絶好の場所。何もないところから、小さな発見をすることができます。それも、その年齢に応じた発見です。まるでそれは、私が学生時代に読んだジャンジャック・ルソーの「エミール」の「幼年時代」を思い起こす、自然に回帰した生き方を思い起こすものでした。 

私も単に病に伏していたわけではありません。家の中でも「豊実の冬」を体験しました。父と子どもたちが留守にしている間、私は部屋にある「巻きストーブ」に薪をくべたりしていました。これも田舎ならではの体験。ぱちぱちと火の粉を吹きながら木は燃えています。そんな音を聞きながら、部屋の中での作業を進めます。薪ストーブの暖かさは、都会では体験できない暖かさです。都会で使用しているエアコンは、無機質な音をたてて、温めてはくれますが、ただ部屋は乾燥するだけ。のども渇き若干の不快感はあります。しかし、このストーブの暖かさは、やわらかく体全体をふんわりと包んでくれるような優しさを感じます。また、なんといってもストーブの中で出される音は格別です。目を閉じてその音を感じるとき、心の安らぎを感じさせられます。薪という自然の恵みに感謝したい、そんな気持ちにさせられるひと時をすごすことができました。自宅ではすることができない、こんな楽しみ。他の方にも伝えたい、そんなひと時でした。 

今回は、虫や動物が眠る冬の体験でしたが、こんどは彼らも眠りから覚める春に行き、あらたな発見をしたいものです。このような環境を与えていただいた佐藤先生ご夫妻、地元の方への感謝を深めると共に、この環境にすこしでもなじんでいこうとの両親の努力に感謝し、また子どもたちをつれて戻りたいものです。

ありがとうございました。