2007.10.11
縄文人とヒデオさんの跡

遠く1万年もの昔、既に、縄文人はタールを接着材として使っていたということがある本に書かれていた。
また、師匠譲りの智恵なのだそうだが、佐藤さんはコールタールを塗料として使う、石の彫刻の世界では珍しい存在なのだと聴いたことがある。
ふとそのとき、なるほど佐藤さんの作品の中に、ほのぼのとした暖かいものを感じるのは縄文人の部分を多く引き継いでいるからなのだろうと、勝手に想像した覚えがある。

さて、ふくろう会の作家?は時間がないので、1日半か2日で作品をつくらなければならない。天気に恵まれる日ばかりではないので、当然、宿題が残される。
今回も、森英夫さんの作品「友よ」もペンキ塗りまではできなかった。そこで、迷サポーター役の筆者登板である。
黒を塗りたいのだが、経費節約の折、たくさんあるコールタールを塗って欲しいという要望が佐藤さんから出る。
ところが、コールタールは晴れた日の、本当は夏の日のような暑い時の方が良いという。

筆者には、何を言っているのかサッパリ分らなかったが、タールの使い方に手馴れた人が言うのだから、間違いないだろうと思いつつ、塗りはじめてやっとその意味が飲み込めた。何とも、ねばりが強くて、ペンキの何倍ものエネルギーが必要なのだ。
2日間に渡って、汗びっしょりになりながら仕上げた作品は、その甲斐あって、木とは思えない鉄のような質感を帯びながら、紅い橋、木々の緑、稲穂の黄色に黒というコントラストを描いて浮かび上がってきた。

一方、大塚秀夫さんの作品「千手観音」は完成かと思いきや、これにもコールタールを塗ることになった。
ところが、材質が吊るしてある鉄板のため、逆に気温が高いとたれてくる。しかし、これには、さほど時間を取られなかった。
緑の原風景には黒も良く似合う。遠くからでも目立つインパクトのある作品になった。
その勢いで、昨年の間地さんの作品、黒い動物たちにもお色直しをさせてもらった。

夕方、1点、プロの作家漆山さんの作品「雪の朝」が搬入され、後1点を残すのみとなった。
今年の「里山アート展」は一段と賑やかにかつ、グレードが上がったことを感じつつ、カゲの働きを務める自分の中にも、縄文人の血が色濃く流れているのだろうと一人静かに納得していた。(御沓一敏)