特定非営利活動法人新潟NPO協会・HPに掲載された記事をご紹介します。

この地域から夢を見れるように
渡辺 航  (特定非営利活動法人新潟NPO協会

このたびNPO法人コスモ夢舞台 代表 佐藤 賢太郎 さんを取材し、下記のように新潟NPO協会のホームページに紹介いたしました。

 「田んぼのあぜ道は歩きにくいでしょ。だからこうやって石畳をあぜに石を敷いているです。そうすれば服装もさほど気にせず田んぼを見てまわれる。こんなことしてるのは全国を探したってなかなか見つからないよ」
 「線路脇の草も里山アート展開催のため僕たちがきれいにしたんですよ。車窓からこの風景を見て欲しくてね」
 真夏の日差しが差し込む田んぼの真ん中で、佐藤賢太郎さんは自分の活動を力強く語ってくれた。

 阿賀町の彫刻家、佐藤さんは、豊実地区の地域づくりを行う「NPO法人コスモ夢舞台」の代表を務め、同団体が開催する里山アート展の準備に大忙しだ。「山のあちこちに芸術作品を散りばめ、里山の景観を楽しんでもらいたくて始めたんですが、今年で7回目になりまして。最初は地元の人達からは不思議がられていたこの企画も、今はすっかり受入れられていますね。“なんだが分からんけど、アートって良いね”と言われるようになりました」

 コスモ夢舞台を立ち上げ活動を始めたのは14年前。きっかけは素朴な理由からだ。「ただ皆で人生を語らい飲む場所が欲しくてね。渓流の流れる杉林の中に“悠々亭”という東屋を作ったんですよ。そこの景観が本当に素晴らしくてね。豊実で生まれ育ってきたけど、この豊かな景観で友人とワイワイやるのが楽しくて。だから最初は、今のような活動をするつもりじゃなかったんですよ」友人同士の憩いの場づくりは、後にギャラリーや宿泊施設の建設、里山アート展の開催へとつながっていった。「悠々亭の建設から、自然との交流に興味をもつようになって。それでギャラリーを作ったし、宿泊施設も作った。ごく自然発生的に、やれることから一歩ずつ取り組んでいったんです」

 また、里山アート展のほか、3年前から田んぼを舞台にした芸能の披露する祭りも行っている。石畳の準備もそのひとつだ。田んぼの周りにはビオトープもつくられ、佐藤さんのいう「自然との関わり」を持てる仕掛けが随所に見られる。「メンバーが高齢化してきちゃって、準備も大変だけど、地元の人も少しずつ理解を示してくれるようになったし、やめられないよ。ここに来る作家さんは、県外はもちろん、海外からもいらっしゃる。そこで交流が生まれて、住民と作家がこの地域から夢を見れるようになったら嬉しいな」佐藤さんは、未完成の石畳を見つめ、感慨深げにそう答えた。