2010.05.23
米つくりと水管理
佐藤賢太郎

埼玉に住んでいたとき、両親が米を作り送ってきてくれていた。自分の選んだ道なのに作家としてのスタートはその日暮らしのようなもので、両親の送ってくれた米でおにぎりを仕事場で食べるとき、両親が真っ黒になって働いて作ったお米を思うだけで、泣けてきた思い出がある。お米にはそんな思い出が離れない。

作家の道に入り、まさかそのとき、自分が米つくりをするなんて思ってもいなかった。その私が、今は両親が作っていた田んぼの水管理を毎日している。とくに今年は昨年以上によい米を作りたいという思いが強い。蛍やさまざまな生き物たちのためにも、畦には一切除草剤を使わないことにしている。

一日2回は水の管理をする。朝、田んぼに水が一杯だったのに、再び田んぼ行くと水がなくなっていることがよくある。そんなとき、あわてて水源に走って詰まった草を取り除くことになる。

昨年から、古代米の田んぼを半分にして田んぼのそばに小川を作った。なぜなら、めだかが田んぼと小川を自由に行き来し、めだかの棲み易い環境をつくることに大事な目的があった。小川より田んぼは水温が暖かいので、田んぼでめだかは繁殖する。そして田んぼに水がなくなるとき小川に戻る。それが見える風景を作りたかった。小川作りの作業をした仲間は何でこんな労働をするのだろうかと思ったかもしれない。こんな調子で、水管理は常に注意深くなり忙しい。

この田んぼの水管理は普通の田んぼとは違い、複雑に組み立ててある。あっちを止め、こっちを流し、しかもザル田と言われる田んぼの管理は忙しい。稲刈りの後、里山アート展、田んぼ夢舞台祭りと続き、田んぼは乾いていなければならない。しかもその周辺でビオトープづくりをするとなると、池や小川は水が張っている状態を保たなければならないというわけだ。