2012.05.06
有機栽培
森 紘一

 「なぜ、有機栽培の道を選ぶのか?」会津若松から講師としてお越しいただいた長尾好章さんの口調は、ゆったりとなめらかで分かりやすい。美味しくて、安心安全な米づくり、野菜づくりは農薬や化学肥料を使わないことに尽きる、と歯切れもいい。

 「コスモ夢舞台2012」のイベントは、GWのビオトープづくりと都市と田舎のフォーラムからはじまった。
 4日(みどりの日)の午後4時、和彩館の丸テーブルは東京ブロックから10名が集まり、地元の会員をふくめ満席となった。

 “除草剤や化学肥料を使うことは、自然を殺しながらモノづくりをすることで、結果として自然を壊す。その点、有機栽培は自然を生かしながら食料生産物を育て、自然を守ります。”
“化学肥料を使わない土づくり、環境づくりに知恵と汗を流すことは生き方につながる選択です。”

そう語る長尾さんは、平成3年高度成長期のリゾート開発に反対する立場から会社勤めに見切りをつけ、有機栽培の農業に転身したそうです。

教員生活から石彫作家に舵を切った佐藤さんに、どこか似た経歴の持ち主である。たしかに、農業をとりまく問題は食や健康、医療、教育の問題につながるこれからの国策上の重要課題である。

長尾さんの指摘する問題意識や取り組みは、我われコスモ夢舞台に共通するところも多く、強い味方を得たような気分になった。

メダカや蛍の川を蘇らせようと、一方でビオトープづくりをはじめながら、夏場にむかう雑草の繁茂期にはどうしても除草剤や殺虫剤を多用したくなってしまう。一時の利便性や経済効率に負けない拒絶の意志をどう持続的に保つことができるか、これがポイントのようである。5日(子供の日)に原発ゼロとなった、いわゆる原発問題もまた然りである。

 国や科学の力をあてにしない生き方を求めて、都市と田舎の人びとが交流し情報の共有をさらに重ねていくことは、孫子の代への我われの責務である。ささやかながらコスモ夢舞台も、その橋渡し役を担っているといえそうだ。