2013.05.31
創造する楽しみ
佐藤賢太郎

 710から日本橋島屋画廊で個展をすることになって、時間に迫られながら、制作は今佳境に入っています。

今回個展の案内文も自分の言葉で表記しましたが、ともかく新たな試みが多い個展です。石材は多くは伊達冠石という石を使いました。その石に助けられてつくられた作品が多くあります。

 伊達冠石(泥かぶり)は、今までに使ったことのない魅力ある石です。しかし、傷が深く入り込んでいる欠点があります。制作中の石を切り落とした後で石の傷が分り、どうしようもないことに出合いました。予備の石がないのでどうしようか考え、もう一段深く切り落とすしかないと決心した。更に切り落としたところ、それでも傷が残っていて困ってしまった。考えあぐねたすえに角度をつけ、さらに切り落としたところ、ようやく傷の底が見えた。

 この作品「方位」は、デパートのショーウインドーで展示するため重さに制限があり、できるだけ軽量化しなければならず、おのずと造形にも影響することになります。

 もともと縄文人を意識したこの「方位」は、大きなサークルで制作しておりましたが会場の制限で小さなサークルに変更しなければならなかった。この「方位」は、昨年横浜高島屋で本体を赤御影で発表したものですが、本体が黒御影になり、サークルも違い別の作品になりました。制作にはまだ時間はかかりますが、こうしてまさに導かれて作らされる作品であります。 

 難あって新しい作品が生まれようとしています。人生の生き方にも同じようなことがあるのではと、ふと思った。そこにまた、創造する楽しみがあります。

 追加

 この文章を書いた後作品方位の磨きに入った。作品のパーツの一つどうにもならない深い傷が現れた。何とかならないか見つめた。どうにもならないので、その部分を叩いて割った。そのパーツないと作品にならない。解決は山に石を買いに行くしかない。しかし個展が近づいてどうしてもつくらねばならない未完のメインの作品があり時間のゆとりがない。即決しなければならない。個展終了したらゆっくり宮城の伊達冠石山に行くつもりであったが、今行くしかない、たった一つのパーツのために行く決断をした。どんな作品が皆様の前に現れるか。魅力あるが難しい伊達冠石である。

 応援してくださった方々のために、ぎりぎりの努力をしようと思った。