2016.10.03
今年の里山アート展
森 紘一

  10月1日(土)早朝、横浜を出る時は小雨が降っていた。上越新幹線の長岡駅あたりからは、雲の切れ間から青空がうかがえた。新潟駅で磐越西線に乗りかえ、豊実へむかう。

しだいに晴れわたっていく青空の下、連なる山々と水かさの増した阿賀野川を車窓から眺めることは実に楽しい。見なれた景色が新鮮に見えるのは、天候不順でぬれた薄墨色のせいかもしれない。新緑の春や秋の紅葉とは違う雄大な迫力を感じた。

 三輌編成の列車が日出谷を過ぎ、豊実駅へ向かって右にカーブすると赤い船渡大橋の手前に「里山アート展」の会場がせまってくる。何という光景だろう。

「すごいなぁ」と、思わず小さな歓声をあげてしまった。大きな自然をバックに色とりどりのさまざま作品群が、思い思いのポーズで伸びやかにストレッチ体操でもしているかのようだ。作品点数は40点を超えるようだが、見事なチームワークによるマスゲームのようでもある。

  13回目となった今年の「里山アート展」は、佐藤さんの配慮で何とか参加させていただいた。実は「モロッコからの招待」の出版記念とモロッコフェスティバルが開かれた日の翌日、半日がかりで作品のペンキ塗りをしたのだが、あの感激は忘れがたい。

 ここ数年、「アートと生活」が里山アート展のテーマとなっている。絵画や彫刻作品を鑑賞することは好きだが、創作する機会は極めてまれなわたしのようなアマチュアが、曲がりなりにも参加させていただけることは、何よりも感謝しなければならないことだと思う。

 あるものを生かし、創意と工夫で何かを表現するという作業は頭の体操である。結果はともかく、作業に没頭している間は何も考えていない。無我夢中である。フト気付くと、右手の刷毛の上に赤とんぼが羽根を休めた。「応援に来てくれたのかな」強い陽ざしに汗をかきながら、長閑な心地良い気分になった。 

 今年の「里山アート展」は、恒例になった日出谷小学校児童や新潟大学Gホームの皆さん、そしてお馴染みになった郡山の障害者グループの皆さんの参加作品も並んでいる。これらの作品群は、「里山アート展」を支えるゆるぎない柱である。

 「里山アート」展のオープニングセレモニーは、正午に開会が宣せられ進められていった。午後1時過ぎから、阿賀町町長の来賓挨拶に続いて、関係方面の挨拶があり、佳境に入って行った。

 今年は、郡山の障害者グループの「わーくIL」と「たいむIL」の有志の皆さんが初めて石夢舞台に上がるということで注目を集めた。電子ピアノの伴奏に合わせ、ライアー奏者のリードで皆さんが楽しそうに合奏する姿に会場からは拍手が絶えなかった。まぶしいほどの陽ざしに皆さんの汗が輝いていた。

 「里山アート展」の会期終了は22日(土)。さて、この先どんなドラマが待ち受けているだろうか。