2012.11.7
里山アート展へのおもい
森 紘一

 わたしには、絵心も創作意欲もあるわけではない。ただ、絵画や彫刻を見たり、陶芸品を眺めたりするのは好きで、今でも気がむくと美術館などへ出向くことがある。

  佐藤賢太郎さんと知り合い、稲刈りの済んだ田んぼに作品を並べて鑑賞するという「里山アート展」と係わり合うようになって、それまで眠っていた体験が徐々によみがえってきた。

それこそ遠い昔、横浜の大岡小学校で代用教員をされていた片岡珠子先生から、絵の描き方を教えていただいた記憶がある。今では、懐かしくも誇らしい思い出である。

当時の先生はもちろん若くて、いつも着物姿の怖い存在だった。それでも、図工の時間は国語や算数よりずっと面白かった。目の前の花瓶や外の景色を画用紙に描き、クレヨンや絵の具で色を塗る学習から、いつの間にか表現することの楽しさや喜びを教え込まれていたのかもしれない。

「里山アート展」に出品されている先生方の作品を見ると、抽象にしても具象にしてもユニークでのびやかな作品が多い。芸術家は目には見えないものを表現し、見る者にそれを考えさせ、想像させる特殊能力を持っていると思うのだが、その作品が豊実の豊かな自然に包みこまれている相乗効果はさらに大きいとおもうのだ。

ある意味では、それぞれの作品が作家を離れて、見る者に自由に語りかけているようにおもえる。美術鑑賞の醍醐味は、そんなところにもあるのではないだろうか。

ところで佐藤さんは今年、畦道の石畳化が完成した田んぼの会場で、作品のガイド役を何回も引き受けたという。日常的にアートに親しんでいただきたいという願いとともに、「アートで何ができるか?」を問い続けるコスモ夢舞台としては、今後も継続していきたい課題である。 

来年、「里山アート展」は第10回目を迎える。できることなら、わたしも「循環・再生・創造」をテーマにワークショップ参加を続けさせていただきたいとおもう。