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               2003.03.08 

佐藤賢太郎との対談

 「人生後半に新境地を1」(森 紘一)     酒処休み屋

一昨年、御沓さんの会社紹介のイベントがありまして、そこで、御沓さんの友人

でもあります森紘一さんを紹介していただきました。

その際私がふくろう会のことを話しますと関心を示してくださいました。そして昨年、

バスツアーに参加された後、ふくろう会に入会されました。

お付き合いはほんの少しの時間ですが、出版関連会社社長さんであり、広く、

理論的に考えられる方でありながら、一杯飲み屋でも私の夢をよく聞いてくださる

方です。これからのふくろう会発展に貢献していただく会員として期待しています。

 

新会員として思うこと

佐藤 どうしてふくろう会に入会されようとしたのですか?森さんのようなキャリア、

年齢の方はふくろう会の定款を見せると、ためらわれる方が多いのですが。

森 最近、「定年後の生き方探しセミナー」や「上手に生きるシニアライフ講座」とい

った新聞社主催の各種イベントが大盛況です。いわゆる団塊の世代の定年が近

づき、現実の社会問題として‘定年後と生きがい’が問われる時代になってきた。

これは高齢化社会先進国『日本』の大きなテーマでもあるわけです。私のまわり

でも、定年がせまって急にセミナーや趣味の会に通い出す先輩がふえています。

しかし、「ふくろう会」はこうしたお仕着せのセミナーやカルチャースクールとは別物

だと思います。「ふくろう会」の皆さんは、“いつまでも少年、少女の心をもった大人

たち”です。そこに親しみと温かさを感じます。生意気を言わせてもらえば、波長が

合ったということですかね。

佐藤 ところで、森さんはお忙しいところ、積極的にふくろう会行事に参加されます、

嬉しく思います。

先日の私の個展オープニングパーティーに友人をお誘いくださいまして有難うござ

いました。お誘いするということはエネルギーが要ると思います。どういう反応でしたか。

森 出版社の友人から“「ふくろう会」は先生の後援会ではないし、先生を取り巻

く親睦会でもなさそうだが、一体何なの?”と質問されました。

規約通り、「ふくろう会」とは石彫家佐藤賢太郎の作品や生き方に共感する人

の集まりであり、かつ一人では実現できない夢を佐藤賢太郎の描くグランドデザイ

ンにそって共に立ち上がり感動を分かち合う会である、というふうに説明したのですが。

佐藤 それで納得いただけたでしょうか。

森 これだけでは友人を充分納得させることはできませんでした。

 そこで改めて「ふくろう会」の魅力とは何なのか、そして「ふくろう会」はどこへ行くの

か。そんな疑問を、僭越ながら「ふくろう会」での僅かな体験と見聞をもとに自問自

答してみた次第です。

 

−創造力と右脳

森 ところでお聞きしたいのですが、佐藤さんは創作意欲どのようにつちかわれて

いるのでしょうか。

佐藤 自然の仕組みと言うか宇宙自然の摂理にある、山、川、海、生きとしいける

もの、動物も植物も女性にも全ての自然物に感動すること。生きることに夢をもつ

ことでしょうか。

そして作品の制作には、創造力意欲が必要です。しかし、感動ある生き方に

は何もアートという分野でなくとも同じでしょう。この対談だってそれがないと成り立

ちませんよね。生きること、生活することが創造的でありたい。だから夢舞台も産ま

れたのです。森さんはどう考えていますか。

森 大半のサラリーマンは、会社人間としての一生を数字と結果責任に縛られて

過ごさざるを得ません。かく言う私もその一人です。左脳を酷使する人生はけっして

創造的ではないが、趣味やスポーツでバランスを取る器用なタイプは少ない。地

域社会やボランティア活動に参加する時間的余裕もない。人生は努力と創造で

切り開くもの、とはいえ右脳はほぼ休眠状態のままなのです。会社人間としては

功成り名を遂げながら酒に溺れる者も多いし、まして明日からは自由の身となって

も、一人で即ギヤーチェンジはスムースにいきません。

その点「ふくろう会」は得意技ナシでも、汗と知恵を絞ることでモノ作りに参加す

ることができる。協同作業による時間の共有で、創造することの喜びと感動を味わ

うことができます。

佐藤 森さんがふくろう会に参加してみようと思ったのも、日ごろからそうした考えをな

されていたからでしょうね。

森 私も常々、画家や音楽家に羨望を持っています。創造するということは、一瞬

のひらめきを見逃さない眼と邪気のない無の心を持つことだと思います。創造する

ということは、着想や構想を実証し発表する勇気を持つことでもあると思います。

作品だけでなく、こうした姿勢で仲間と一緒に夢を実現しようとする「ふくろう会」

は、まさに右脳の活性化と創造力の若返りを促進するビタミン剤です。その中心に

佐藤賢太郎があって生まれたのが「ふくろう会」ですね。その意味でも作家佐藤賢

太郎の創作活動と生き方の影響力は限りなく大きいといえます。

 

−スローライフとフクロウ派

佐藤 かつてJRのディスカバージャパンに、そんなに急いでどこへ行くと言うポスターが

ありました。早く早く、IT革命インターネット、夜も昼もなく営業し効率化合理化の

時代にあって、こんなことでいいのだろうかと思う。

夢舞台はそんな時代に、昔、ゆったりとした生き方があった、忘れていたもの、

忘れかけている大切なことを呼び戻して
みよう。そんな希望から始まりました。

森 そういえば、イタリアの「スローフード」に始まった伝統食を見直す運動も、地場

の食材を手間隙かけて料理して味わうことへの再評価でした。農薬や化学性添加

物を使用したファーストフードへの反省でもあり、転じて、しなやかな健康法という

「スローヘルス」なる造語を生み、さらに「スローライフ」という生き方への提唱に結び

ついています。

佐藤 食べ物の話になりましたが夢舞台では食べ物が感動する大切な要素です。

春になったら雪の下から芽を出したふきのとうを食べるのが私の楽しみです。それを

味噌汁とかてんぷらにして食べると何か体がクリーニングされる、そんな実感がします。

森 最近は、ハンバーガーとコーラに代表されるバイ・アメリカンなファーストフードは、

世界の先進諸国で敬遠されています。バブルがはじけ高齢化の進む日本でも、玄

菜食を中心としたマクロビオティック料理が静かなブームだそうです。スピードからスロ

ーへ、一人一人が足元を見つめ、己の人生を振りかえるゆとりが出て来た証拠とい

えそうです。

余談ながら、高タンパク、高脂質の過食は子供の成育に危険で、俗にいうキレ

易いタカ派タイプと何事によらず無気力で虚弱体質のハト派人間を増殖すると

いいます。

佐藤 そんな話を聞きますと、何もない淋しい村が実は見方、考え方の視点を変

えると、宝の村ではないかと思えますね。それにはローライフに価値をみいだせない

とだめですね。

 それが一番大事な点でしょうね。高齢化の一方で少子化をかかえる日本にと

ってはゆゆしき問題です。“命の質を高めながら健康を維持していくのが本当の人

生ではないか”QOL(quality of life)の精神は「ふくろう会」にも通じると思います。

佐藤 すると、ふくろう会はいろんな可能性を秘めていますね。私は常々足元に価

値があることに気がつかなくてならない、青い鳥がどこかにいるというようなことではだ

めだと思います。常に向上しようとする精神から足元に価値が見出せるのだと考え

ています。

ふくろう会もただ余暇に楽しむ憩いの会と言うのでなく、これから社会全体が考え

ていかなければならないことを提案していく。そんな会としていい風を吹かせる存在に

なりたいですね。

森 知恵の守り神にあやかり、「ふくろう会」としてはフクロウ派の老若男女との交流

の輪を広げていかなければならない。その際、情報発信の全国展開にインターネッ

トは欠かせないツールとなるでしょう。「ふくろう会」の当面の課題はこの辺にあると思

います。

佐藤 森さんのおっしゃるような何々シンポジュウムとういう討論会は多くあると思い

ますし、理想の話としてはよくあります。しかし、いざ実行となると利害、関係労力の

問題、エゴなどがさまざまにからんでなかなか実現ができませんね。ふくろう会もその

辺のところをしっかりおさえておかないと今後の発展はないなと思っています

 

−夢舞台と収穫祭

森 話は変わりますが、日本に帰化した作家C.W.ニコルが政府の未来生活懇

談会委員として興味あるコメントを寄せています。“日本には三つの大切な柱があ

る。

一つはあらゆるものを真に保障する安全である。二つ目は、生命あるものは全

てみな健やかでなければならないという健康である。三つ目は自然環境の美しさで

ある。この安全と健やかさと美しさがあれば、社会は正義と安寧を求めつづけてい

ける。

私は日本人として、この国を誇りに思う。”日本人が忘れがちな自然の豊かさ

や四季の移ろいだけでなく、日本人の失いがちな心のありようまで語って絶妙だと思

います。

佐藤 観光地でも何でもない見落とされているところが輝いていったらどんなにいい

だろう。雪国の過疎は淋しいものですよ。夢なんて語れない現実がありますからね。

今それが本当に実現しそうな処に来ています。

森 「ふくろう会」のベースキャンプ、新潟豊実の冬の厳しさを私はまだ知りませんが、

昨年秋、訪ねた時に見た大自然に抱かれた街並の美しさには感動しました。和彩

館や滔滔亭が完成し宿泊が可能になったら、まさに‘身土不二’で土地の収穫物

を食べてみたいと思いました。それに、山菜や柿、栗等の無農薬自然食品を出荷

できないだろうかと夢が膨らみます。夢舞台での農作業が自給自足のためだけで

なく、ささやかでも事業という体裁が整えば、これもまた新しい「ふくろう会」の情報

発信となって全国に届くことにもなります。

佐藤 いいですね、会員の大野さんの奥さんは今年自分たちのグループで柿をと

ってつるしてみよう、そんなツアーを組むそうです。

森 素晴らしいアイディアですね。夢舞台での収穫祭は「ふくろう会」のつぎなる夢で

あり、大きな飛躍に繋がりそうな楽しい予感がします。

佐藤 これからのふくろう会のビジョンを示唆した深い内容となりましたことに大変嬉

しく思いました。ありがとうございました。