新潟豊実自然塾を終えて

心を育てる学習塾WIN&WINセミナー

塾長 古田 修一     

新潟豊実自然塾を開催するまで

 8月10日から12日までの2泊3日で、私たちの塾が毎年恒例で行っている自然塾を無事に終えることができました。今回は、佐藤賢太郎先生との貴重な出会いから、毎年行っている自然塾を、新潟豊実のコスモ夢舞台の地をお借りして実施することになりました。タイミングも全て良く、ちょうど、佐藤先生・大塚先生を中心として、「コスモ夢舞台塾」を本格的に稼動させようと考えられている時期でもあり、お互いにwin&winの関係を結べるような企画になったと思います。

 毎年、私たちは自然塾を行ってきましたが、私が新しく塾長に就任してから、楽しみながら、教育効果も上げることができる自然塾を考えていました。これまでは、確かに楽しみの要素はありましたが、いま一つ教育的なものが欲しいと考えていました。

 今後の心を育てる学習塾を作っていくうえで、どうすれば教育効果の上がる企画を運営できるかを考えているときに、佐藤先生と出会いました。佐藤先生と初めてお話をさせていただき、印象にのこったこととして、「今の子どもたちには、考える力・創造力をつけていく必要がある」という考えがありました。現代の生活では、ボタン一つで機械が全てのことをやってくれますし、子どもの遊びも、コンピュータを使ったものが主流になっていて、自ら考えて行動する機会が少なくなっています。このことは、何も子どもたちだけではなく、私たち大人にも同じことが言えるように感じます。便利な世の中になり、考える機会を減らしています。どこかに旅に出るにしても、時刻表を読むことなく、時刻表検索を使えば、一発で時間と料金と、乗り換えポイントを知ることができます。また、車で出かけるにしても、以前はロードマップを片手に、どの道で行けば最短で到着することができるかを考えていましたが、今ではカーナビゲーションが自動的に最短距離を検索してくれます。そんな、日頃の生活一つ一つを取ってみても、考える機会が以前に比べるとだいぶ減ってきているように感じます。

 佐藤先生との話の中でもありましたが、こんな便利な道具などに依存しきった生活に慣れてしまうと、いざ震災などの災害時に、ライフラインがストップしたら、何も無い状況に対応が取れない現代人は、慌てふためいてしまうのでしょう。

 この自然塾を通して、子どもたちだけではなく、私たち大人も、生きていく力、そして考える力をつける機会として、この自然塾は有意義な企画になったと思っています。

自然塾開催! 一日目

 8月10日、朝6時半に北浦和駅前に集合。今回は7名の参加者と、4名の引率。合計11名での出発になりました。参加者は、小学4年生1名、5年生1名、6年生2名、中学2年生3名でした。年齢層にばらつきがあり、これからやろうとしているプログラムにそれぞれの学年の生徒がしっかりと対応できるかという心配もありましたが、初めての企画でもあったので、どのくらい対応が取れるかということも、私たちが注目するところでありました。

 当日はバスを貸切り、新潟豊実の地へ。高速道路も混雑することなく、予定よりも早く到着しました。

 午後12時半頃到着。今回の企画で、宿泊場所としてお借りした「豊実会館」に荷物を移動させ、その後和彩館で開会式を行いました。開会式では、佐藤先生、大塚先生、コスモ夢舞台の会員でもある私の父からあいさつを頂き、自然塾がスタートしました。

 当日はお盆前の時期にしては珍しく、台風が接近していて、新潟県も場合によっては台風の影響を受けるかもしれない状況でしたが、雨は小雨で降ったりやんだりの天候でしたので、全員カッパを着用して、外のプログラムを進めることにしました。

 最初のプログラムは、薪割り体験です。間伐で採ってきた木材を、燃料の薪として使えるようにナタを用いて割っていきます。私も自然塾の事前下見の段階で、薪割り作業を体験させていただきましたが、まっすぐにナタを振り落とすことが難しく、うまく割ることができませんでした。また、日頃使っていない筋肉を使うものですから、全身が筋肉痛になった覚えがあります。この作業を子どもたちができるのか。また、小学生も4年生からいましたので、体力的にも大丈夫か心配でした。

 しかし、そんな心配もうそのようでした。やはり子どもの感覚はするどいものがあります。最初は苦労しているようでしたが、一度感覚をつかんでしまうと、大人よりも上手に薪を割っていくのです。それも真ん中から真っ二つに。小学生も体力的に心配でしたが、コツコツとナタを何度も振り落としながら、最終的には全員割ることができました。私が見ていて感心したのは、小学生です。すぐにあきらめることなく、何度も何度もナタを振り落とすのです。ものすごい集中力です。塾の授業でも、できないとすぐに弱音を吐いてしまうような生徒でも、割れるまで、最後までやりきる姿を見ることができました。このような姿は、日頃の授業では見ることができません。

 今回薪割りの指導をしていただいた大塚先生(コスモ夢舞台スタッフ)からは、薪を割る技術だけではなく、どうすれば危険から身を守ることができるかも考えさせる指導もありました。薪を割るときにはナタを使います。木も切れるくらいですから、人でも簡単に切ってしまうことができます。そんなナタを使っているわけですので、ボーッと立っていると、何かの誤りで事故になることもあります。そのような事故にならないために、「しっかりと考えなさい」、と考えさせることも、子どもたちにとっていい勉強になったと思います。

 薪割りを終えた後は、事前に準備をしていただいたお風呂に入りました。本来であれば、割った薪を使い、火をおこして、お湯を沸かす作業から体験させたかったのですが、時間の制約もあったため準備はコスモ夢舞台のスタッフの方にお願いしました。薪で沸かすお風呂。自然の山からの清水を利用したお風呂。電気もガスも使わずに、自然にあるものだけで沸かしているお風呂。そんなお風呂に、生徒たちも心地よく、その日の労働でかいた汗を流すことができました。

 お風呂のあとは、楽しみの食事です。和彩館の食事は、無農薬の野菜を中心にした料理です。今回は食事を作るところも体験させたかったので、お米を炊き、野菜カレーを作りました。お米は釜を使い、火を起こすところから始めました。火を起こすときの材料としては、使用済みの割り箸、木の枝などです。これも自然からの恵み。無駄なものは一切ない生活の一つです。今回の火起こしは、小学生が中心になりやりました。火の調節から、火を消すところまで全て子どもたちでやることができ、仕上がりも上々でした。

 カレーライス作りは中学生が中心に。野菜を切る作業からはじめました。野菜を切るにも、手元が見ていて不安なところがありましたが、今回は何も言わずに見ることにしました。そうすると生徒たちも、切り方を徐々に工夫しながらやる姿を見ることができました。ここでも考える力が働いています。

 すべてできたら、食事です。食べる前にも、佐藤先生からお話をしていただきました。「いただきます」と食べる前にいいますが、なぜ「いただきます」を言うのか。中学生はさすがに分かっていたようで、積極的に発言。「生きている動物や野菜などを、人間が殺して食べるので、それに対して感謝の気持ちをもって、いただきますというと思います。」と、中学生の一人が発言しました。日頃、何も考えることなく食べている食事ではありますが、このような感謝の気持ちをもつ機会を作ることも、私たちにとっては大切なことと感じました。

 カレーには肉が入っていない、完全な野菜カレーですが、食べっぷりにもびっくりでした。一生懸命体を動かしたということもあり、一気に完売。お米も2升炊いたとの話ですが、それもほとんどなくなってしまいました。小学生あたりは、好き嫌いで、野菜はいやだ、という子もでるかと心配していましたが、全員が無農薬野菜にはおいしいと、もりもり食べていました。食が進むのも健康的な証拠です。食の大切さに関しても学ぶことができました。

 食事後には、夜間の佐藤先生による講義がありました。ギリシャでの彫刻設置とフランスでのアート活動から帰国されたばかりでしたので、そこで先生が感じられたことなど、動画を見ながら話をしていただきました。特に私が印象に残ったのは、フランスでのバイオリンとパーカッション、ダンス、そして佐藤先生の絵画創作のコラボレーションでした。音楽にしてもダンスにしても、絵画にしても、どれも即興。周りの雰囲気を察しあいながら進めていく姿に心打たれました。私も音楽をやっていて、譜面があったとしても、周りの音、雰囲気などを感じあわないといけませんので、即興には関心をもって先生のお話をうかがいました。

自然塾 二日目

 2日目の朝は6時起床。今回の自然塾では、夜は早く寝て、朝は早くという自然のリズムをしっかりと作ることも目的としてあります。起きてからかるくランニングをし、その後佐藤先生による、座禅の指導がありました。以前私は一度座禅を体験したことがあるのですが、かなり時もたっていましたので、どのようにやるのかは、ほとんど忘れていました。改めて座禅を学ぶと、心を落ち着かせる精神的な効果と、呼吸法により、酸素を体全身にめぐらせることができ、脳の活性化と、健康面にも効果があると、体験してみて感じることができました。座禅に関する知識があるわけではありませんが、体でそのようなことを感じ取ることができたのです。

 座禅が終わると、朝食です。朝の軽いランニングに、座禅を通して、頭も体も完全に起きた状態でしたので、お腹も適度にすいていました。私は日頃不規則な生活から、朝にこれだけ食事を欲することはありませんが、この3日間は自然とお腹がすき、健康であることを感じることができました。

 朝食には玄米が出てきました。玄米について佐藤先生からお話があり、普通の白米に比べて、玄米にはさまざまな栄養が含まれているとの話を受け、全員でその玄米をいただきました。中には玄米を苦手にする子どももいると思いましたが、ここでもそのような心配はなく、全員がおいしいと言って食べることができました。健康的な生活を送っているせいか、子どもたちの食欲が朝から旺盛で、おかわりをしている子どもも多くいました。日頃の朝食では考えられない光景ではないでしょうか。 

 2日目の活動は大きく分けて2つありました。一つは、林の整備、もう一つは川遊びと自然のアスレチックです。午前中には、林の整備を行いました。林を快適な空間にするために、雑草を抜き取り、また杉の枯れ枝を集め、それを燃やして処分する作業でした。林の整備の後には、畑の草むしり作業。どの作業をとっても、自然を維持していくためには大切な作業であり、また単調な作業なので、子どもたちに、どのように受けいれられるかを見ていましたが、意外と集中して取り組むことができました。今回は初めての体験ということもあり、日常では体験できない作業なので、受け入れることもできていたのでしょうが、一番大切なのは、それを日常の生活として取り入れていく力、つまり、継続する力が大切と感じます。そのことを考えると、この活動も、今回1回で終わるのではなく、継続性を持たせることが大切と、感じさせられます。

 午後は子どもたちも楽しみにしていた川遊びです。何も整備されていない自然のままの川を歩きながら下っていきます。そこには形状の違う石もあり、よく注意して歩かないと転ぶこともあります。どの道を通れば安全に歩くことができるか。それも、この活動の意図するところでした。大塚先生からは、「自分で歩く道は自分でしっかりと考えるように」、とご指導をいただき、全員で歩いていきました。当日は雨も降っていましたので、若干水の量が増えて、流れも速かったのですが、子どもたちは案外器用に歩き進めます。逆に私たち大人のほうが、転んだりし、日頃の危険察知は、私たちのほうが鈍いような感じもしました。

 川を下りきると、今度は自然のアスレチック。がけになっているところを、ロープを伝いながら登ります。心配な子もいましたが、最後まで全員登りきることができ、泣きながら登っていた生徒もいましたが、一つの自信をつけることができたと思います。

食事を終え、最後の佐藤先生からのお話を聞きました。自然体験をしている人は、していない人に比べて、意欲が高くなる割合が高くなるとの話でした。確かにこのような体験をすると、私自身も体を動かすことにより、脳も活性化し、前向きな気持ちになります。私たち大人も、デスクに向かいじっと仕事をしていることが多いのですが、体を動かすといいアイデアも浮かんでくるようです。このような体験は私たち大人にも、たまには必要だと感じました。この次は、大人のための自然塾、というのも面白いかもしれません。

自然塾 最終日

 3日目、最終日。この日のメインの活動は、ピザ焼き体験です。その前に時間もありましたので、最後の田舎暮らし体験をしました。田んぼに行き、その周辺での草刈、そして、炭つくり体験です。草は事前に機械を使って除草したものを、まとめておく作業でした。その後の炭つくりが、印象的。ひごろ私たちはバーベキューをするにも、近くのホームセンターに行き、できたものを購入しますが、ここでは、炭まで作ってしまいます。2日目夜のバーベキューでは、佐藤先生が作られた炭を使いました。どのように作るのか知りませんでしたので、いい勉強になりました。ドラム缶にもみがらを入れ、その中に木を並べていきます。もみがらに火をつけ、後はじっくりと蒸し焼きにしていくという感じです。丸一日はかかるようで、仕上がりを見ることはできませんでしたが、何から何まで、無駄にすることなく、あるものを利用しての生活に感心しました。

 11時頃から、ピザ作りの準備ができ、全員でピザの生地を伸ばし、トッピングする作業から始めました。生徒たちも思い思いのトッピングをし、かなり贅沢なピザを作っていました。トッピングが終わると、石釜にピザを入れ焼きます。この作業は、かなり高温になり、危険ということで、大人にやってもらいましたが、仕上がったピザを食べ、どの生徒も満足そうでした。

自然塾を終えて

 あっという間の3日間でした。自然の中での活動は考えれば考えるほどたくさんあります。その中の一部を体験したに過ぎません。この活動を通して、もう少し時間が取れればと感じました。1週間、1ヶ月など。体験ですので、まだ楽しいだけで終わっているところもあります。しかし、田舎暮らしは続けているうちにさまざまな困難も出てくると思うのです。そのような困難に打ち勝つ力が真の意味での生き抜く力にもつながると考えます。

 最終日の夜に、佐藤先生とお話をし、私たち引率が付くと、少し甘えが出るのではないかとのご指摘を受けました。私もそのご指摘には同感でした。日頃付き合っている私たちが一緒にいると、いろいろと依存してくることがあります。私たちは抜きで、現地の中に入れてしまい、そこで体験を積むと、また違った形で効果が上がるのかもしれません。

 国際化が進行している現在、海外への留学が流行しています。しかし、佐藤先生との話を通して、海外へ留学する前に、日本国内、その中でも豊実での留学も有意義ではないかと感じました。日本の田舎暮らしを体験し、日本特有の文化を学び、それから海外へと出て行くのが、順番として正しいと思います。このようなことを考えると、私たちの活動も、夢が膨らむような感じがします。

 佐藤先生をはじめ、コスモ夢舞台の皆様方には、本当にお世話になりました。今後も、子どもたちの教育のために、お互いに考えを深めることができるお付き合いをしていただけると幸いです。今後ともよろしくお願い申し上げます。